「たとえば米国の小学校で、学習机の上に立った小型のロボットが児童に掛け算を教えていたら、一部の国民から強い反発の声が上がるだろう。そうした人々にとり、身長60センチのロボットが10歳児に勉強を教えるなど、受け入れがたい光景なのだ」(同氏)
しかしそれが日本、韓国、中国だったらどうだろうか。「何の問題も起こらないはずだ」と同氏は言う。
反乱への備え
ロボット化による大量失業は必然である。では、失業した労働者たちには何が起きるのか。「労働パターンの変化は、常に社会秩序の不安定化に直結する」とRoss氏は語る。
ボルティモアに住むRoss氏は2015年に起きた暴動を目の当たりにした。同氏によると、人々を暴動に駆り立てた根本要因は、自分たちの経済的境遇に対する強い不安感と不公平感だという。「1990年代の自由貿易協定締結時のような反対運動が起きたとしても、私はまったく驚かない。2020年代には、労働のロボット化に対して同じような反対運動が沸き起こるだろう」
未来の産業への備え
Ross氏は、職業教育やコミュニティーカレッジなどの分野に対する投資が極めて重要だと考えている。なぜなら将来、数百万という米国人の再教育に対応する必要が生じるからだ。「2016年現在の職業教育は、1956年の職業教育からほとんど進歩していない。われわれは将来の成長産業を見極めたうえで、職業教育の方向性を抜本的に修正する必要がある」
「歴史的に、この種の教育機関は国民の最も脆弱な層」に焦点を当ててきた経緯がある。したがって、それらの人々を将来に向けて準備させることが必要不可欠だ。「将来的には、たとえばサイバーセキュリティの準学位が必要な職種など、新たな分野の雇用が数多く創出されるはずだ。コミュニティーカレッジの役割は、抜本的に改革される必要があるだろう」
TechRepublic読者に向けた3つのキーポイント
- ロボット化に迅速かつ適切に対応できる国ほど、ロボット化の恩恵に預かることができる。ロボット化を受け入れる土壌がある国の筆頭は、日本、ドイツ、韓国だ。
- ロボット化により職を奪われた労働者たちが、社会経済的に重大な影響をもたらす。ロボット化に対する反発が、反対運動や暴動となって表出する可能性がある。
- 将来の米国経済を担う人材を育てるうえで、職業教育への投資が極めて重要となる。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。