2016年の「IT人材」と採用

事業会社に“シェフ”が足りない--2016年に求められる「IT人材」とは - (page 2)

竹内真

2016-04-04 07:00

 東証マザーズへの新規上場企業のうち、2014年は約3分の1、2015年には過半数をスマートフォンアプリやウェブサービスの提供などを行うIT関連ベンチャーが占めており、このような事業会社が新しいビジネスを生み出しています。事業会社に所属するエンジニアとSIerに所属するエンジニアでは、期待される役割が異なります。

IT部門の内製化で期待できること

 振り返ると、かつてインターネットの世界は今よりも小さいものでした。ウェブサイトを作ってYahoo!のディレクトリに登録されれば人が集まり、それだけでビジネスが成り立つ時代もありました。ところが今では世界中のエンジニアがものすごいスピードでアプリケーションやサービスを作り、先行者利益を確保しようとしたり、先達を倒そうとしたりといった苛烈なサバイバルの様相を呈しています。

 インフラとなるシステムはクラウド化が進み、誰もが簡単に利用できる状態となりました。OS、ウェブサーバ、アプリケーションサーバなどのインターネットサービスを構築するために必要なアプリケーションも、OSSで全てそろえ、構築することが可能です。

 プログラミング言語やフレームワークなども、Ruby on Railsをはじめ、簡単なものであれば非エンジニアでも数日で開発できるような基盤が作り上げられてきました。このように「作る」ということだけを考えれば、10年前20年前と比較しても参入障壁が極端に低くなったと言えます。

 例え成功を収めたとしても、のんびりしていては後ろから追いつかれてしまう。「一刻も早く商売のタネになるものを作ってリリースしよう」という流れになり、攻め続けなければいけなくなりました。

 実際にわれわれビズリーチの各サービスでも、隔週に一度、定期にリリースをしています。これによってPDCAサイクルを高速で回すことが可能となり、より深く顧客のニーズに応えることができているのではないかと感じています。

 (人月でリソースを提供する)ビジネスモデル上、安く早く作ってほしいというクライアントの期待に応えることが難しいSIerのエンジニアとは異なり、事業会社内のエンジニアは、「構築に時間をかけてもお金にならない」という意識があるため、なるべく楽に早く開発できる方法を考えます。それは決して悪いことではないと私は考えています。

 よく言われることですが、エンジニアが「面倒くさがり」であることは、美徳の1つともいわれています。エンジニアは、複雑で面倒なものを作りたいのではなく、面倒な課題をプログラミングによって解消したいのです。面倒くさがりであればあるほど、エンジニアとしては大成するのではないでしょうか。そういったエンジニアはたとえ少しくらい仕様と違っていたとしても、もっと早く簡単に課題や問題を解決する方法を編み出します。

 事業会社では、開発スピードの向上だけでなく、「作ったものを収益化する」ための課題解決力が求められます。エンジニアの視座が収益化まで見据えたものになれば、生み出されるサービスの収益化も、事業の成長スピードも確実に早くなります。今、事業会社でIT部門の内製化が進んでいるのは、こうしたメリットに気付き、エンジニアに賭ける企業が増えてきたということでしょう。

料理ができるだけではシェフになれない

 レストランの例で考えてみると、決められた料理を作るだけのレストランは、開店当初の評判はよかったとしても、新しいメニューを開発しないとやがて飽きられてしまいます。サービスを伴うものに対して顧客のニーズはどんどん高まり、さらに競合との競争のなかでそのニーズに追いついていかなければ店に対する需要はなくなってしまうからです。

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