NTTコムが新「Enterprise Cloud」、専有型クラウドとOpenStack共有型クラウドをSDNで統合

日川佳三

2016-03-01 17:54

 NTTコミュニケーションズ(NTTコム)は3月1日、業務システムを稼働させる用途のIaaS型クラウドサービス「Enterprise Cloud」の機能を強化したと発表した。OpenStackベースの共有型仮想サーバを利用できるようにしたほか、専有型サーバではベアメタルサーバやサーバ仮想化基盤(VMware vSphere/Hyper-V)を利用できるようにした。価格は、ベアメタルサーバの場合、2ソケットの汎用用途で1分当たり5.704366円。月額上限料金は23万円。

 NTTコムはこれまで、業務システム用途に信頼性を重視したホスティング型プライベートクラウドEnterprise Cloudと、アプリケーション開発者にとって使いやすいことを狙ったOpenStackベースのパブリッククラウド「クラウド・エヌ(Cloudn)」の2ブランドを提供してきた。今後は、Cloudnのサービスはそのままに、新たにCloudnの機能を取り込む形でEnterprise Cloudを強化している。「(Enterprise Cloudだけで)トラディショナルICTとクラウドネイティブICTを両立する」(NTTコム)ことが狙いだ。

 Enterprise Cloudの強化ではまず、サーバ環境を充実させた。従来はVMware仮想サーバを提供していた。今回の機能強化では、OpenStackベースの仮想サーバ「共有型Cloud」を提供するとともに、VMware vSphereおよびHyper-Vのサーバ仮想化ソフトの実行環境をそのまま提供する「Hosted Private Cloudマルチハイパーバイザー」とベアメタルサーバを提供する「Hosted Private Cloudベアメタルサーバー」をメニューに加えた。


新しい「Enterpeise Cloud」の構成

 Hosted Private Cloudを用意した理由を「オンプレミスのVMware/Hyper-V環境で動作しているシステム資産を、VMwareやHyper-Vの運用体制を壊すことなくそのままクラウドに移行できるようにするため」と説明するのは、NTTコミュニケーションズでクラウドサービス部ホスティングサービス部門長を務める栗原秀樹氏。これまでのEnterprise Cloudでは、ユーザーがVMware vCenterを使ってサーバを管理したり、バックアップサーバを遠隔拠点に作成するといった運用が難しかった。

 同社のSDN(ソフトウェアデファインドネットワーク)技術によって、ホスティング型プライベートクラウドと共有型パブリッククラウドを同一ネットワーク上に共存させることもできるという。ファイアウォール、負荷分散装置、ウェブフロントエンド、アプリケーションサーバ、データベースサーバなどで構成する、社内LANと同様のネットワーク構成をクラウド上に再現できる。

OpenStackをベースに自前機能を拡充、近い将来にコンテナもサービス化


NTTコミュニケーションズ クラウドサービス部ホスティングサービス部門長 栗原秀樹氏

 機能強化したEnterprise Cloudの共有クラウド部分は、OpenStackをベースにサービスのフレームワークを作っている。OpenStackの標準コンポーネントをそのまま使っているものとしては、仮想サーバを起動/停止する「Nova」、仮想サーバイメージを管理する「Glance」、ブロックストレージの「Cinder」、ウェブ管理コンソールの「Horizon」、ユーザ認証/認可の「Keystone」、などがある。

 標準コンポーネントだけでは足りない部分は、自前で開発した。例えば、ベアメタルサーバを制御するコントローラなどだ。OpenStackの標準機能でもNovaとIronicを組み合わせることによってベアメタルサーバを制御できるが、VMware/Hyper-Vを運用する上で足りない部分があったという。ネットワーク機能も、社内LANと同等のネットワーク構成を実現するために、OpenStack Neutronに相当する機能を自前で開発した。

 ただし、自前開発のサービスについては、OpenStackの表記やデータモデルを踏襲するなど、OpenStackのフレームワークや文化を壊さないように留意したという。これにより、OpenStack標準のコンポーネントと自前開発のコンポーネントを、相性良く1つのフレームワークに取り込めているという。

 今後は、SAP HANAの実行環境や企業向けストレージなど、より企業に向いたサービスメニューを拡充していく。コンテナ仮想化環境については現在ベータテスト中であり、「来年にはコンテナが当たり前になる。なるべく早い時期にコンテナのサービスを提供したい」(栗原氏)としている。

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