海外コメンタリー

クラウド全盛時代にパッケージソフトは生き残れるか

Joe McKendrick (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2016-03-11 06:30

 30年前に初めて登場したとき、パッケージソフトは革命的だった。組織や個人は、コーディングやシステム構築のためにプログラマーを雇わなくても、スプレッドシートからERPに至るまでのさまざまな完全なソリューションを、何枚かのディスクが入ったパッケージの形で購入できるようになった。JDEdwardsなどのソフトウェアメーカーは、財務から人事まであらゆる業務をカバーするERPシステムを、すぐに使える形でパッケージ化した。次第に企業は、必要な機能を利用するために、これらのパッケージソフトを貪欲に利用し始めた。

 しかし今は、ソフトウェアの提供方式として、クラウドコンピューティング(特にSaaSの利用量に応じて料金を支払うサブスクリプションモデル)がもてはやされるようになっている。では、今後パッケージソフトは絶滅してしまうのだろうか。最近、ロチェスター大学のサイモンビジネススクールでは、クラウド時代におけるこれら2つのアプローチのビジネスモデルを比較する調査が行われた。その調査結果は、ソフトウェア会社が提供するサービスや製品のあるべき姿について知見を与えてくれる。

 SaaSには勢いがあり、レポートの著者であるDan Ma氏とAbraham Seidmann氏は、この勢いは今後も続く可能性が高いと結論している。「継続的な技術進歩、ソフトウェア標準の導入、異なるアプリケーションをつなぐ一貫したプラットフォームを作ろうとする努力などを見れば、SaaSは今後市場で確固たる地位を確立すると考えられる」と著者らは言う。

 SaaSには、企業が先行投資なしに機能を利用できる、より少ない人員で生産性を向上させられるなどの利点もある。しかし、SaaSプロバイダーは「マルチテナント環境で運用しているため、カスタマイズオプションが限定される傾向がある。これは、複数の顧客が同じOS、同じハードウェア、同じデータストレージメカニズム上で動作する同じアプリケーションを共有しているためだ。これこそが、SaaSが規模の経済の恩恵を受けられる理由だが、ユーザーはサービスが組織に合わなかったり、統合のコストが高く付くなどのデメリットを被る可能性がある」という。

 Ma氏とSeidmann氏は、パッケージソフトウェアソリューションの主な強みは、カスタマイズ性と統合の容易さにあると指摘する。同氏らは、典型的なパッケージソフトウェアは、「基盤となるソフトウェアのソースコードにアクセスするためのAPIを提供しており、カスタマイズや、事業への統合が容易にできる」と述べている。

 Ma氏とSeidman氏はSaaSプロバイダーに対して、競争力を維持するためにコストを低く抑える努力を続けることを勧めている。「SaaSプロバイダーの利益は、トランザクション量の合計に比例する。従って、利用量の多いユーザーから得られる利益は、利用量が少ないユーザーよりもはるかに大きい。このためSaaSプロバイダーは、利用量が多いユーザーを獲得するために、価格面で積極的に競争する強いインセンティブを有している」

 また、パッケージソフトを提供する企業に対しては、その真逆のことを勧めている。つまり、値下げを避けるべきだというのだ。「パッケージソフト企業にとって、ソフトウェアの値下げはよい戦略とは言えない。むしろ、積極的にソフトウェア開発に投資して機能を充実させ、その価値を高めるべきだ」

 究極的には、ソフトウェアベンダーとその顧客には、両方の形でソリューションを提供することが有利に働くという。「例えば、OracleやIBMなどの一部のプロバイダーは、ハイブリッド戦略をとっている。通常、そういった企業は、高機能なバージョンのソフトウェアをパッケージ製品として販売する一方、簡素化したバージョンをSaaS製品として提供している」(両氏)

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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