日本たばこ産業(JT)は、医薬事業部の医薬研究開発業務のユーザーPC環境として、仮想デスクトップ環境を導入した。これまで使ってきた物理PCと同等の性能を実現しつつ、一元管理で運用管理者の負担を軽減、セキュリティを強化しているという。富士通が3月30日に発表した。
JTは、IT部門が全社を統括してOSやInternet Explorerのバージョンアップなどを適宜実施している。しかし医薬事業部では、医薬品の承認申請や安全性情報報告のために、厳格に検証された環境上での業務システム稼働が求められ、国が定める厳しい規制に対応する必要があった。
その結果、一般的なOSバージョンアップやそれに伴うクライアント端末の入れ替えなどが発生すると、その環境に業務システムを対応させるための新たな検証や改修が必要になるなど業務負荷や追加コストが発生し、ビジネス上のサイクルに大きな影響を与えることが課題となっていた。社外へ持ち出す端末のセキュリティも喫緊の課題となっていたという。

JT医薬事業部の仮想デスクトップのシステム概要(富士通提供)
今回の仮想デスクトップ環境は、こうした医薬事業部特有の事情にあわせ、高負荷な計算処理や大容量の画像データを扱う業務に対応できる構成で構築された。具体的には、x86ブレードサーバ「FUJITSU Server PRIMERGY BX400」を基盤に、コスト面や運用の効率性の観点からWindows Serverの仮想化機能「Hyper-V」を活用、その上で利用するPC環境のOSを「Citrix XenDesktop」で仮想化している。
仮想デスクトップ環境のデータは、Hyper-Vに対応したSSD/HDDハイブリッド型の仮想化環境専用ストレージ「FUJITSU Storage ETERNUS TR850」に保存。現在では、医薬事業部の約200ユーザーが同環境を利用しているという。
仮想化されたWindowsとXenDesktopをチューニングし最適化することで、仮想デスクトップ環境でありながら、データ解析や画像処理などの負荷の高い処理をこなせるようにし、従来の物理PCと同等の高い性能と操作性を実現しているという。
仮想デスクトップ環境でクライアント端末のOSやソフトウェアのバージョンアップに影響されない、JT医薬事業部固有の業務ライフサイクルにあわせた中長期的な計画に基づく運用が可能となった。ユーザー環境を仮想環境上で集中管理することで、ソフトウェアのアップデートや新しいアプリケーションの導入時など、運用管理者が一括してメンテナンスできるようになった。
ダイナミックリソース管理ソフトウェア「FUJITSU Software ServerView Resource Orchestrator」の仮想デスクトップの自動作成、仮想デスクトップと物理サーバの一元監視機能で運用管理を効率化することで、約200ユーザーの環境管理を3人の運用管理者でまかなっている。
クライアント端末からネットワークを介して仮想デスクトップ環境上のデータを利用する構成のため、クライアント端末側にはデータが保存されず、万が一のクライアント端末紛失時にも情報漏洩の危険性を低減する。JT医薬事業部では、今回導入した仮想デスクトップ環境のセキュリティと性能を生かし、テレワークでの活用も開始している。