コネクテッドカーから考える「本当に重要なIoT」--自動運転を加速させる“V2X” - (page 4)

Thomas Nigg (u-blox 製品戦略ポジショニング部門 シニアディレクター) Costas Meimetis (u-blox 製品戦略近距離無線部門 ディレクター)

2016-04-04 08:00

 これらのGNSSは制限なしに一般向けに提供されている、正確に測位するためには複数のGNSS、マルチパス抑制、カルマンフィルター法、マルチ周波数処理、3D推測航法などを使用する必要がある。

 通常、データシートには安定した正確性を示す数字が記載されているが、真の高精度測位の正確性は、実世界の動的な性能を基準とするほか、加速度計、ジャイロスコープ、アンチロックブレーキシステム(ABS)センサから収集した速度に関する情報をいかにうまく統合できるかを基準として判定される。

 例えば、優れた実装としては、車両がトンネルに入った場合、その車両がトンネルを出るまでに、3D推測航法とオフラインの地図マッピングを組み合わせて使用することで、車両の現在地を知らせるようなシステムが考えられる。

 幸いなことに、高精度測位システムは通常、受信するだけで送信しないため、設計者は米国の連邦通信委員会(FCC)、欧州のCE、その他の国の無線規制に関して考慮する必要はない。ただし、電波の干渉は考慮すべき重要な要因となることがあることを認識してほしい。

 欧州とロシアでは現在、緊急通話(eCall)サービスで必要となる測位精度を1m未満に設定する動きがあり、米国もそれに続いている。今や、適切な測位レシーバーやモジュールを選択することは、すべての自動車メーカーにとっての最優先事項となっていると言える。

 モジュールが提供可能になった場合、OEMが直面する最大の問題はアンテナの設置であり、シャークフィン型のアンテナ設計は、一般的なアプローチの1つだ。

 シャークフィン型の場合、アンテナは車のルーフに設置され、同軸ケーブルでテレマティクス制御装置(Telematics Control Unit:TCU)に接続する必要がある。このTCUからEthernet、無線、CAN-Busインターフェースを使用して、ヘッドユニットや後部座席ディスプレイにデータが配信される。

 場合によっては、高価なRFケーブルを節約するために、電子機器全体を天井部分に移動させることもある。これを行うには、拡張的な動作温度範囲を備えた電子機器コンポーネントが必要となってくる(図3)。

図3:無線と測位情報のための共用アンテナでは、同軸ケーブルでTCUに接続する必要がある。ただし、より低コストなデジタルケーブルへの移行が進行中であり、その場合、すべての無線がフィン(またはミラー)内に統合されることになる
図3:無線と測位情報のための共用アンテナでは、同軸ケーブルでTCUに接続する必要がある。ただし、より低コストなデジタルケーブルへの移行が進行中であり、その場合、すべての無線がフィン(またはミラー)内に統合されることになる

 これまでは同軸ケーブルが伝統的に使用されてきたが、アンテナダイバーシティを実現するために、すべてのトランシーバー電子機器をシャークフィン内またはサイドミラー内に統合することで、より低コストのデジタルケーブルが利用できるようになる。ただし、その場合、TCUは-40~105℃の温度範囲で動作可能でなければならない。

 これらのトランシーバーには、Wi-FiやBluetooth Low Energyのインターフェースやセルラーインターフェースが含まれる。これらのインターフェースはデータ交換に適しているが、V2V、V2I、V2Xの通信では遅延が少ないことが必須となるため、自動車向けのWi-Fi規格である「IEEE 802.11p」を搭載することが強く推奨されている。

 802.11pは802.11(Wi-Fi)標準に対する修正の1つであり、5.9GHz帯(5.85~5.925GHz)のライセンス済みITS帯域における、高速な自動車間でのデータ通信、自動車と沿道インフラストラクチャ間でのデータ交換を可能にする規格だ。

 802.11pは完全に異なる物理層であるため、それ独自の無線を必要とする。これは、ハードウェア、ソフトウェア、コンプライアンに関してより多くのコストがかかることを意味するが、それらのコストの大部分はモジュールを使用することで相殺されるだろう。

 モジュール型のアプローチは、セルラー事業者の観点からも興味深いものとなる。なぜなら、米国に拠点を置く事業者は、デバイスが自社ネットワーク上で許可される前に、完全なコンプライアンスの検査が必要となるためだ。この検査に合格するためには、まず当該デバイスが影響を及ぼさないことを証明する必要がある。ちなみに欧州では、これは法的には問題にならない。

最後に

 V2Xと「本当に重要なIoT」の登場により、自動車業界と運行管理業界はすでに“次なる巨大テクノロジの戦場”と化しており、ハードウェアとソフトウェアの両方、革新的なサービスに関して多くのビジネスチャンスを生み出している。われわれがいつ完全な自動運転へと移行できるかは、これらの最初のクリティカルなステップがいかにして管理、そして実装されるかによって決定されるだろう。

 ほんの小さな過ちが命取りとなる恐れがあるため、急激なイノベーションの流れの中でリスクや誤りを最小化することは困難な課題だ。重大な局面では、最善なテクノロジとパートナーを選択する必要があるだろう。

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