Appleの創業者であるSteve Jobs氏がこの世を去ったとき、彼はWalt Disney Companyの筆頭株主だった。Jobs氏は、PixarをDisneyに売却したとき、Pixerの株式と引き替えにDisneyの株式7.7%を手に入れていたのだ。だが、あまり一般に知られていないのは、Jobs氏の性格や流儀がどれほどWalt Disney氏に似ていたかだ。両者はビジョンを語り、会社を興し、イノベーションを具現化した。
若き日の失敗から、歴史に名を残す偉業、そしてイノベーションに至るまで、実はJobs氏とDisney氏の間には無数の類似性がある。Jobs氏とDisney氏はその類似性を通じて、イノベーションに関する貴重な教訓を後世に遺してくれた。
1)決してあきらめない
Jobs氏の復活劇については、改めて説明するまでもないだろう。彼はJohn Sculley氏によってMac部門から追放され、NeXTの「荒野」(Sculley氏はこう揶揄した)に迷い込んだ後、紆余曲折を経てAppleに返り咲き、同社を人類史上有数の企業へと導いた。
Disney氏も数々の失敗を経験した。兄のRoy Disney氏とDisney Brothers(後のWalt Disney Company)を創業する何年も前に、Disney氏はLaugh-O-Gram Studioを創業した。
Laugh-O-Gram Studioは、地元映画館向けの短編アニメーションシリーズなどを制作していたが、その経営は幾度も危機に見舞われた。そして、高い制作費をかけたアニメーションシリーズの対価をニューヨークの大手映画館チェーンから回収できなくなった瞬間、Laugh-O-Gram Studioは倒産した。Disney氏の手元には、ロサンゼルス行きの列車の切符を買うだけの金しか残らなかった。
Jobs氏とDisney氏が、現代の文化を語るうえで欠かすことのできない巨大企業を築き上げたのは、周知の事実である。ここでの教訓は、たとえ破滅的に思えるような失敗に見舞われたとしても、それは必ずしも人生の失敗を意味しないということだ。決してあきらめずに挑戦する。たとえ今、絶望の暗闇に捕らわれているとしても、未来には希望の光が待っているかもしれないのだから。
2)クリエイティブなパートナーを通じて自分の潜在能力を開花させる
ここで言うクリエイティブなパートナーとは、Steve Wozniak氏でも、Sculley氏でも、Mike Markkula氏でも、ましてやRoy Disney氏でもない。クリエイティブなパートナーとは、Jony Ive氏やUb Iwerks氏のような人物である(ちなみに筆者はいつも「Iwerks」を「iWerks」と綴りたい衝動に駆られる)。
Ive氏の名はご存じの方も多いだろう。Appleの製品デザインを統括する傑物であり、「iPod」、初代「iMac」、「iPhone」のデザインは、すべて同氏の見事な感覚によって実現した。Ive氏はJobs氏の分身だと評されている。彼は、シンプルさを最重視したJobs氏のデザインコンセプトを忠実に継承しながら、それを製品として具現化させる能力を備えている。