新中計でセイコーエプソンが狙うもの(中編)--自らの強みにフォーカス - (page 3)

大河原克行

2016-05-29 08:00

 ビジュアルコミュニケーション領域では、「独創のマイクロディスプレイ技術とプロジェクション技術を極め、ビジネスと生活のあらゆる場面で感動の映像体験と快適なビジュアルコミュニケーション環境を創造し続ける」ことをビジョンとし、プロジェクタの既存分野では、表示性能の向上はもちろん、表示サイズ拡大や変更の容易性、超大画面での一覧性という観点で価値を高めるという。

 「その鍵となる技術が、レーザーなどの光源技術や光制御技術。これを極めて、さらに設置、メンテナンスまでを含めた顧客満足度を高めることで、プロジェクタ市場拡大をけん引していく」とする。

 サイネージ市場に対しても提案を加速。「これまでのディスプレイではなしえない価値を創り上げ、ライティングなどの新しい分野へ応用範囲を広げていく」とした。

 ここでの“ライティング”という言葉が業界内で静かに注目を集めている。

 碓井氏は、「説明が不十分なところもあり、照明事業に本格参入するのかといった誤解を招いている部分もある」と笑うが、プロジェクタに固体光源を活用することで、寿命を大幅に延長できるといった特徴を生かした新た提案がここには含まれている。例えば、プロジェクタを使っていないときには、その光源を利用して白色の光を出しておくことで、照明の代わりに利用するといった提案を行っていくという。

 「オフィス内の窓がない部屋にもプロジェクタで窓のように風景を表示したり、天井を青空にしたりといった使い方もできる。プロジェクタをプレゼンテーションのためにだけ使うのではなく、照明をはじめとする他の用途にも使える提案を進めていく」という。これが、エプソンが目指すライティング事業の考え方だ。

 一方、ウェアラブル領域では、「ウォッチのDNAを基盤に正確な時間とセンシングに磨きをかけ個性あふれる製品群を創り出し、さまざまな顧客に対して、着ける喜び、使う喜びを提供する」ことをビジョンに掲げ、エプソンのウォッチ事業が持つ、精密加工技術やムーブメント開発力などの固有技術を活用。既存のウォッチメーカーやIT系企業では作り出すことができない製品を提供する」という。

 スポーツ、カジュアル、ビジネスといった多様な場面で装着し、使う喜びと感動をもたらす個性あふれる製品群を創出することで、ウェアラブルイノベーションを実現していくとしている。

 ロボティクス領域では、「省・小・精の技術に加え、センシングとスマート化の技術を融合させたコア技術を製造領域で磨きあげる。そして、それらの技術を広げて、あらゆる領域でロボットが人々を支える未来を実現する」ことをビジョンに掲げる。

 アクチュエータ、センシング、ソフトウェアといったコア技術を磨き、どんな製品の製造にも対応できるフレキシブルなロボットセル、人の作業をそのまま置き換えられる双腕ロボットなどを作り出し、さらにロボットの導入障壁を下げるという。

 「安全で人と共存できるロボットを作り、製造業以外の産業やサービス、パーソナルなどのあらゆる分野に進化したロボットを広げることでロボティクスイノベーションを実現する」という。だが、コンシューマー用途のロボットは視野には入れていないことを明らかにしている。

 そして、最後のマイクロデバイス領域は、これまでの4つの領域すべてを支える事業と位置付け、「エプソン独自のデバイス技術をコアに水晶の『精』を極めたタイミングソリューションやセンシングソリューションと、半導体の『省』を極めたパワーソリューションにより、通信、電力、交通、製造がスマート化する社会をけん引するとともにエプソン完成品の価値創造に貢献する」とした。

 水晶デバイスと半導体の技術を融合したソリューションの提供により、今後の社会のスマート化をけん引すると同時に、プリンタやプロジェクタなどエプソンの完成品の性能向上に貢献できるという。

 このように、Epson 25では、絞り込んだ領域でエプソンの強みを生かすという姿勢がより明確になったと言える。これだけの具体性はSE15のときには打ち出されてはいなかった。SE15の成果が、より具体性を持った長期ビジョンへと生まれ変わったのがEpson 25だといえる。

後編に続く)

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