「BusinessObjects」の名称を使用したリブランディング:SAPは「BusinessObjects」のブランド名で、アナリティクス関連製品群の統合と合理化を進めると発表した。「SAP BusinessObjects Cloud」と「SAP BusinessObjects Enterprise」という2つの大きなカテゴリが用意され、後者にはオンプレミスで動作するすべてのBI製品とアナリティクス製品が分類される。最近買収されたRoambiのモバイルアナリティクスアプリケーション製品は「SAP BusinessObjects Roambi」となり、BusinessObjects Cloudブランドで提供されるが、同時に低コストな選択肢としてBusinesssObjects Enterpriseのカテゴリでも提供される。
筆者の評価:SAPがブランド名を変更するのはいつものことだ。これらの新しい名前が長続きすることを祈ろう。SAPはBusinessObjectsブランドに興味を失っているように見えたが、これを使わなければならない状況に追い込まれたということだろう。SAPはまだBusinessObjectsの顧客を数多く抱えており、その多くはほかのSAP製品を利用していない。BusinessObjects Cloudのような次世代の製品を投入しなければ、このブランドの将来は失われていただろう。
BusinessObjects Cloudに予測機能を導入:名前が変更されただけでなく、予測的アナリティクス関連の機能が追加されたことは重要だ。この第1弾には、時系列での予測機能や、「誘導ありの機械による発見」機能が含まれている。SAPによれば、今後ほかのアルゴリズムも追加される予定だ。
筆者の評価:BusinessObjects Cloudにはすでに1000社以上の顧客がいるが、その段階はトライアルの段階から、すでに加入している企業までさまざまだ。予測的アナリティクスの機能はこの製品の魅力を高め、計画や分析の今後に対する知見を得られるようにする。競合相手には、クラウドベースの「IBM Watson Analytics」があり、現時点ではこちらの方が用意されているアルゴリズムは多いが、予測機能の中身はブラックボックスになっている。Anaplanも最近予測機能を発表したが、同社のクラウドプラットフォームはプランニングに特化している。BusinessObjects Cloudは、プランニングとビジネスインテリジェンス(データ発見および視覚的分析)の両方を扱う製品であり、そこに予測機能が加わったことになる。使いやすさと、最適アルゴリズムの選択とコントロールの間のバランスをどのように取るかがポイントになるだろう。
SAP Digital Consumer Insight Service:デジタルの世界では、アナリストは参照URLや滞在時間、購入までのデジタル行動経路などのデータを調べることができる。SAPPHIRE NOWで発表された「SAP Digital Consumer Insight Service」は、物理世界における同様の情報を提供する。顧客は、米国の任意の場所のモバイルトラフィックデータを最大3日分ダウンロードできる。提供される知見は、主要な携帯通信企業の相互接続を担っているSybase 365が持つ、個人が特定できないよう加工された携帯電話の利用データから得られたものだ。
Consumer Insight Serviceでは、特定の店舗の位置や、店舗立地候補付近のレストラン、郵便番号、その他の地理的なエリアなどを指定することができる。利用できる知見としては、人々がどこから来て、どこへ向かっているか、滞在時間、年齢、性別、使用しているデータなどが考えられる。価格はレポート1件につき439ドルで、数量割引として、5件ダウンロードすると4件分の価格に値引きされる。
筆者の評価:SAPが新しい革新的なビジネスモデル(今回の場合は自社データの収益化)について語るのはよいことだ。販売手段が、SAPStore.com経由でのクレジットカードによる購入に限定されているのには驚かされた。大企業向けのさまざまな価格設定が考えられると思うのだが、最高デジタル責任者兼SAP Digitalの責任者であるJonathan Becher氏は、SAPStore.comはITのコンシューマライゼーションを目指していると述べている。その目標は、低コストで人間が関与せずにSAPのソフトウェアやサービスをオンライン購入できるようにすることで、極めて幅広い市場を視野に入れているという。これはSAPの内側から起ころうとしているデジタルによる市場破壊であり、注目に値する。