藤本恭史「もっと気楽にFinTech」

FinTechでサクッと顧客体験を向上しよう - (page 2)

藤本恭史

2016-06-20 07:00

Fintechは手段であり手法

 では、どうすれば購入に至るコンバージョン率を上げることができるでしょうか。簡単です。購入に関してのプロセスを物理的な環境の制限から解き放てばいいのですよね。例えば決済手段として物理的行動が必要になる現金、クレジットカードだけでなく、PayPalやその他のデジタルウォレット決済を導入すれば、カスタマーは座ったままで自分のIDとパスワードだけで決済が可能になります。でも「買うために見るのは雑誌だし、デジタルウォレット決済するためのデバイスなんて機内に導入されてないでしょ?」と思われるかもしれません。

 数年前、世界の航空会社でiPadやWindowsベースのタブレットの機内導入がニュース紙面を騒がせました。今何の目的でそれらのタブレットが活用されているかわかりませんが、そういったデバイスを活用して購入・決済メニューを作ればいいかもしれません。しかも今は機内Wi-Fiが多くの機体で導入されています。Wi-Fi接続圏内であれば即時決済が可能になります。席から立ち上がらなくて決済できる、それだけで今のペインポイントのかなり多くを改善でき、購入率が上がるとは思われませんか?


 しかも、テクノロジベースのオーダー、決済に移行すれば、ほかの可能性もまた見えてきます。機内販売品を買うと、キャビンアテンダントが商品を席まで持ってきてくれますが、持ってこられても、それを収納するためにまた席から立ち上がり、オーバーヘッドコンパートメントを開ける、という行動を繰り返さなければなりません。これではせっかくデジタルウォレットなどで席から立つ必要をなくした購入前のユーザーエクスペリエンスを打ち消してしまいます。また、人気のある商品はせっかく葛藤のすえに購入を決断したのに在庫切れで買えない、ということも良くあります。これも解決できるかもしれません。

 機内でカスタマーが欲しい商品の決済だけ完了させ、そのオーダー情報をWi-Fi経由のバッチで帰港地に送り、帰港地でオーダー商品を準備し、カスタマーの降機の際に商品をゲートで渡す、というのはどうでしょう。免税品を搭乗前に買った際、搭乗直前にゲートで手渡しされるあの逆バージョンですね。空港ベースで在庫を抱えれば、機内で在庫を抱えて在庫切れになるリスクをかなり減らすことができると思いますし、オペレーションもよりスマートではないでしょうか。キャビンアテンダントのリソースと時間の活用を機内で別の仕事に振り返ることができるというメリットもあるかもしれません。

 このように、FinTechを活用してカスタマーのペインポイントを改善できる余地はかなりありますが、重要なのは、FinTechの活用はあくまで手段もしくは手法であり、その前後一貫したカスタマージャーニー全体を改善することで、より多くのビジネスの成功を得ることができるのです。

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