藤本恭史「もっと気楽にFinTech」

「爆買い」終焉後のビジネス機会--越境ECとFinTech

藤本恭史 2016年11月14日 07時00分

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 こんにちは、PayPalの藤本恭史です。前回、外国人観光客の訪日時の素晴らしいおもてなし体験が、次の重要なビジネスチャンスである越境ECに繋がる、と最後に書きました。今回はこの注目の越境ECに関して考えてみたいと思います。

 日本の越境ECの最大の取引先国は、米国と中国です。経済産業省によると2015年の3カ国間のB to C越境EC市場規模は2兆7664億円であり、その成長率は前年対比22.6%と大きな成長を遂げています。その内訳を図式化したものが以下です。


日・米・中のB to C越境EC市場の成長率

 日本を買い手側としてみた場合、最大の輸入国は米国であり、さらに米国及び中国からの購入額が前年対比約7%と伸びている現状、さらに円高傾向によって数値が加速化されることが予想されます。実際に英国がEUからの離脱を決定したBrexit以降、ポンドの下落と円高によって、PayPal内での日本からの決済も急に英国方面が増えました。特にホビーグッズである高級自転車パーツなどの高単価商品の取引が顕著に伸びており、為替変動に敏感なユーザーに動きが見られます。この円高を利用して初めて海外ECサイトから商品を買った、そんな読者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 この連載の最初にご紹介した通り、海外のサイトから商品を購入する際に、初めて買うサイトではクレジットカードを登録したくない、また実際にきちんと商品が届くのか不安だ、そのような要望に対してクレジットカードの登録が必要ではなく、また買い手保護制度のあるPayPalをご利用いただくケースが非常に多いです。こういった独自の保証サービスを提供できるのもFinTechサービスの醍醐味です。

 日本においてはまだまだ知られていないことも多いPayPalですが、海外での知名度は抜群であり、ほぼデファクトスタンダードとしてご利用いただいています。


主要国の越境ECユーザーが過去1年間に利用したことのある決済方法

 さて、このように書くとPayPalの宣伝かと思われるかもしれませんが、しかし前述の越境ECのもう1つの流れ(“越境EC”という用語を使う場合はこちらが主体になりますが)、すなわち日本側が売り手になって米国や中国など海外の消費者を相手にモノを売る際に、海外の消費者がどのような決済手段を好んで使っているか、ということは非常に重要なファクターです。そして、PayPalの調査によると消費者が越境ECで買い物する際に気にする項目のトップ2は、「送料」「安全な決済」です(なお中国では送料に変えて「本物である」という項目が入ります)。

 例えば上記の表のように、米国、豪州、英国などは越境ECユーザーにとってPayPalの利用率は圧倒的です。越境EC向けショップをモールなどに出店する場合、そのモールの決済手段に従うことが多いと思いますが(なお、楽天市場の越境EC版である「Rakuten Global Market」ではPayPalの利用が可能です)、個別に海外の消費者向けにショップを開いている場合、お客様が望んでいる決済手段を用意することは最初のカゴ落ちリスクを低減し、2回目以降の購入を促すことにつながります。

 繰り返しになりますが、世界共通認識として、自分のあまりよく知らないショップでクレジットカード番号を入力することは、セキュリティリスクの観点から多くの人が避けたいと考えている事実があるということであり、それを避けることのできる決済手段が求められているということです。

 上記の表から、中国、韓国ではPayPalは残念ながら1位ではないものの、2位、3位に位置しています。興味深いのは、中国も韓国も国内のECショップでPayPalを利用するための国内ライセンスを調査時点では取得していません。つまり、中国と韓国の消費者は、国内のECではPayPalは使えず、越境ECで買う時だけPayPalを利用していることになるのですが、それでも国際ブランドであるVisaや圧倒的多数のAlipay(支付宝)、Union Pay(銀聯)に次ぐ地位を獲得しています。

 ECショップ側が中国の消費者を相手に越境ECを展開したいという場合には、Alipayに対応し、そしてUnion Payにも対応すればよい、ということになりますが、対応には当然与信も必要であれば導入のためのさまざまな手続き、投資が必要です。ひとつ一つ対応していくのはなかなか難しいというのが現状でしょう。その点で、PayPalはUnion Payに対応していますので自動的に中国のお客様に対して2位、3位の決済手段を簡単にご提供していただくことが可能です。

 また中国だけでなく各国グローバルブランドに対応していますので、ターゲットとする国別の対応を個別に取らなくてよいというメリットがあります。PayPal以外の各社も同様に国際決済の導入支援を実施していますので、そういったFinTechサービスを活用することで、越境ECの間口を広く持つことが出来るでしょう。いずれにせよ、グローバルの求める決済手段を提供する、これは越境EC成功のための基本です。

 なおPayPalでは、越境ECも含めたECショップ、つまり売り手側を保護するための売り手保護制度が提供されています。不正防止のため、未承認の支払い取り消しがあった場合や、発送した商品が購入者に届かなかった場合など、売り手側に被害が及ぶケースにおいて、一定の条件のもとPayPalが対象となる支払い額の全額を売り手に保証します。ECショップが独自にリスクを取らなくとも、不慣れな土地を対象とした越境ECビジネスに置いて安心して販促に注力いただくことが可能です。

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