藤本恭史「もっと気楽にFinTech」

「爆買い」終焉後のビジネス機会--越境ECとFinTech - (page 3)

藤本恭史

2016-11-14 07:00

越境ECの成功のカギはマーケティング

 一方で、訪日インバウンドに頼らずとも、直接的に越境EC向けショップを通じてオンラインの世界の中で顧客を集め、購入してもらうという道も当然あります。しかしこの場合には、前述した通りどう現地のターゲットに対してマーケティングするのかが大きなチャレンジです。

 越境ECの場合、ECモールに出店するケースと、自社ECサイトでビジネスを展開するケースの2通りがあります。中国向け越境ECでECモールに出店する場合、「天猫(T-mall)」もしくは、「天猫国際」や「京東商城(JD.com)を利用することになると思いますが、中国の消費者は何か商品を探すとき、これらメジャーなモールの中で商品検索をし、目的の商品を探します。つまり、自社ブランドや商品ブランド認知が低い場合は、いかに自社製品の発見率を高めることができるかがポイントになります。

 モールの場合は集客をモール自体が担保してくれますが、自社ECサイトの場合は集客まで考えなければならないので負担はかなり大きくなります。しかも中国の場合Googleが使えないため、Google対策SEOが使えません。特に自社ブランドの認知が低ければ、集客のための広告投資や、中国に特徴的な口コミやソーシャルメディアでの認知拡大など、ハードルはかなり高いものとなっています。

 1つの考え方として、こういうマーケティング目的にもPayPalのようなグローバルFinTechプラットフォームを使っていただくと利点が多いということが挙げられます。

 PayPalのアクティブユーザーは全世界に1億9000万人、そしてそれらのアクティブユーザーが国境を越えて世界で取引をしています。各国のPayPalチームは自国のユーザーの利便性のため、自国内のECショップの紹介はもとより、越境ECのため海外のECショップの紹介を積極的に行い、国際間でショッピングを楽しんでいただくためのマーケティングも行っています。

 例えば中国のチームは国内ライセンスを持ちませんので、海外のECショップを中国の消費者に紹介することに専念しています。そのようにして、PayPalは202カ国でビジネスを展開していますが、PayPalを採用するということは、この202カ国、1億9000万人のアクティブユーザーの経済圏に参加することであり、PayPalのブランド認知による安心感に加え、この経済圏を通じた世界の消費者にアクセスできるチケットを手にする、ということを意味します。もちろん集客効果にプラスになることは間違いありません。国内、国外含めて積極的なマーケティングを展開しているPayPalが決済プラットフォームの中ではかなり特殊なケースかもしれませんが、しかしこういったFinTechプラットフォームの持つユーザー資産やグローバルネットワーク効果を最大限集客に活用するということは、越境ECを成功に導く大きな近道だと思います。

 2020年東京オリンピックに向けて、ますます訪日インバウンドは加速し、政府目標の4000万人が実現すれば、現時点の2倍の訪日外国人の方がより日本を知り、興味を持ち、そしてファンになる可能性がある、ということです。そこから越境ECに広がる可能性は無限大で、しかもより長く密接な関係を海外の消費者と結ぶことが可能です。国境を越えて世界とビジネスをする、その一端をFinTechがサポートします。

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