「日本のアイデアを海外がさらっていく」現状--量子アニーリング理論の可能性(2) - (page 3)

吉澤亨史 山田竜司 (編集部) 2016年08月31日 06時30分

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田中氏 私は現在、リクルートコミュニケーションズとマーケティングコミュニケーションのさらなる最適化を目指し、共同で研究しています。量子アニーリングをソフトウェア実装し、シミュレーションしています。このように産業界に根ざした、もしくは人々の生活に根ざした多種多様な実問題に対する量子アニーリングの適用事例が次々現れることが必要です。

 一方、量子アニーリングが日本の産業界に広がっているとは言えない。この原因として考えられるのは「量子アニーリング」という名前から何ができるのかがイメージがしづらいという点です。

 これはわれわれのような現場の研究者が努力して、さまざまな方々にお伝えしていかなければならない。少しずつではありますが、講演などを通じ、ご理解いただけている方が増えているという実感を持ち始めています。しかし、より深刻な問題は、応用志向の事例がほとんどないことです。事例を通じ、産業界の興味が集まるという流れを起こしたいのです。

 多種多様な事例が次々現れたとしたら、量子アニーリングと似た仕組みの組み合わせ最適化問題専用マシンも次々開発されていくでしょう。そのような中、組み合わせ最適化問題を解くマシンを作るスーパー中学生とかスーパー高校生が日本から突然出てきたら、と思うとワクワクしますね。そしてますますこうした技術が盛り上がり、研究開発が活性化される。この流れのきっかけを作りたいのです。

大関氏 そのためにハードウェアを作るだけではなくてソフトウェア的な側面で量子力学に基づくものを見せるという展開も必要なわけです。国から助成金をもらって研究している「量子アニーリングが拓く計算技術と機械学習の新時代」も、量子アニーリングがいかに役に立つかということを示すために、現実的な問題に取り組んでいます。

 たとえば田中さんは量子アニーリングでデータの集まりをデータ間の類似度によりグループ分けする「クラスタ分析」(クラスタリング)をやられていましたが、クラスタリングは機械学習のうち、データの背後に存在する構造を抽出する「教師なし学習」の一番基本的な方法であり、代表例です。それが従来の方法よりも高速に、より良い精度を持つ解を得ることができるとなれば、うずうずしてくる人もいるのではないでしょうか。

 クラスタリングの例のように、今までのコンピュータに量子アニーリングをシミュレーションさせることによって、これまで知られていたアルゴリズムよりも高速で、精度が高い結果がでるという可能性があります。量子力学に従ったハードウェアを作ることだけではなく、量子力学を使ったアプローチで今までのアルゴリズムを見直してもいいのではないか、ということです。


量子アニーリングによるクラスタリング

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