SAPジャパンは、各企業と消費者との間で生じる取引初期段階からサポートまでのデジタルな双方向の一連のやりとり“デジタルインタラクション”による体験“デジタルエクスペリエンス(DX)”についての調査報告書「2016年デジタル・エクスペリエンス・レポート日本編」を7月28日に発表した。
調査は、2015年にオーストラリアで開始したオンライン調査プロジェクトの拡大版として、日本を含むアジア太平洋地域10カ国で実施。各国でDXの満足度の高い回答者(高位層)から相対的に低い回答者(低位層)の比率を引いた、満足度スコア(DXスコア)を算出している。
日本版では、国内在住の18歳以上の男女を対象に収集した有効回答3103サンプルを日経BP社イノベーションICT研究所と日経BPコンサルティングが協力して分析した。産業別では、銀行、政府機関、公共事業、通信・ISP、消費財小売、自動車産業、ハイテクという国内の7業界でDXの構成要素14項目に関し、それぞれ11段階(0~10)で数値化している。
日本の総DXスコアはマイナス31%と10カ国中で最低だった。日本企業が消費者のデジタル体験に対するニーズや要望に応えられておらず、取り組むべき課題が多いことを意味していると同時に、DXの改善で競合他社との差異化を図れる可能性を示す。
DXスコアが高い回答者(高位層)は、評価する企業を友人や家族などに勧める推奨意向を示す「NPS」(ネットプロモータースコア、家族や知人に勧めるかどうかの推奨意向の指標)が大きく、逆にDXスコアが低い回答者(低位層)は推奨意向が極めて弱い、という結果が出ている。DX満足度の高位層は継続利用意向が68%、中位層の32%の2倍以上となり、DXスコアが継続利用意向(ロイヤルティ)とも関係が強いことが分かった。
7業種のうちハイテクと自動車産業のDXスコアはゼロ%だったのに対し、その他5業種はマイナスという結果だった。いずれの業種でも企業によってDXスコアに開きがあり、DXの良し悪しが競争力に影響を与える可能性が高いと言える。
個別ブランドでは、有効回答数を得られた39ブランドのうち最も高いDXスコアを獲得したのはグローバル企業のアップルジャパンだった。DXでの重要度では「安全性が高い」に続いて、「リコメンドしてくれるが、プライバシーは侵害しない」、「いつでもどこでもアクセス、買い物できる」などが上位だった。
20~30代の“デジタルネイティブ世代”は、全体と同じく「安全性が高い」を最も重視する一方で、他の世代に比べて「いつでもどこでもアクセス、買い物できる」「ワクワクさせ魅了する」「ライフスタイルに合い、楽である」といった要素を重視していることが分かった。
この世代のDXスコアは上の世代と比べるとやや高い傾向にあり、プライバシー情報を提供してよいと考える比率も高くなっている。さらに、ソーシャルメディアなどを通じて影響を与える「インフルエンサー」の占める割合も高い。こうした状況を踏まえると、日本企業は、これからの消費の中心となっていくデジタルネイティブ世代に対して、より良いDXを提供する取り組みを強化すべきと提言している。