世界経済フォーラムは米国時間8月12日、ブロックチェーンが金融分野に起こす変化などに関してまとめた報告書を公開した。ブロックチェーンは期待に応えるものとなり、金融サービスに変化をもたらす可能性があるという。一方で、新しい技術や規制当局などと注意深く連携することも重要だとしている。
ブロックチェーンは分散レッジャー(台帳)とも言われるもので、中央管理型に対して分散型で取引記録などの台帳を管理する技術。FinTechにおいて重要な技術となっており、IBMなどの技術ベンダーも積極的に取り組んでいる。
世界経済フォーラムのレポートは「Disruptive Innovation in Financial Services」(金融サービスの破壊的イノベーション)に基づいた「The future of financial infrastructure」(金融インフラストラクチャの未来)というもので、Deloitteと共同で作成した。保険、決済、貯蓄とローン、資金調達、投資管理など6つのカテゴリでのブロックチェーンのユースケースに焦点を当てている。
たとえば、手数料が発生し、複数のステップを経て行われる国際収支や電信送金、長く効率の悪いプロセスを経る銀行の当局へのコンプライアンス報告など、基本的な財務サービスの一部がブロックチェーンに置きかわるだろうと予想している。
世界経済フォーラムの金融サービス業界部門のトップを務めるGiancarlo Bruno氏は、「ブロックチェーンは金融業界の周辺にとどまるのではなく、脈を打つ心臓部のような中心的なものとなるだろう。ブロックチェーンは業界全般にわたる革新的なソリューションの構築を促し、メインフレームやメッセージサービス、電子取引が過去にそうだったように、金融サービスの構造に一層統合されるだろう」と述べている。
ポイントとして、以下の4つを挙げている。
- 分散レッジャー技術(ブロックチェーン)は、新しい金融サービスインフラとプロセスを構築し、シンプル化と効率化を促す可能性がある。
- 分散レッジャー技術は、既存の技術や今後登場する新しい技術とともに次世代の金融サービスインフラの基盤を構築する。
- 過去の技術的進化と同様に、新しい金融サービスインフラは現在のビジネスモデルの正当性に疑問を呈し、変革する。
- 最も影響力のある分散レッジャー技術のアプリケーションは、既存企業、新しい技術を開発する新規参入者、規制当局との間の深い連携を必要とするものだ。複雑さを増し、実装が遅れるだろう。