データセンターでの応用
DNAストレージはデータセンターのアーカイブストレージ技術としても使用されるだろう。Ceze氏はこれを「究極のバックアップシステム」と呼んでいる。同氏のチームの目標は、DNAシンセサイザとシーケンサを搭載している点以外は、他のストレージ機器とまったく同じ見た目のエンドツーエンドのシステムを作り出すことだ。ユーザーがDNAを直接取り扱うのではなく、機械にすべてを任せてしまうのだ。
Ceze氏は「これは安全かつ簡単に管理できるものとなる」と述べたうえで、「ユーザーはストレージ容量の増大と保存能力の向上という点を除けば、DNAを使用していると気付きすらしないかもしれない」と付け加えている。
Ceze氏はこのような機器がコンシューマーの家庭で使用されるようになるとは考えていないが、将来的にはそういったことが可能になるほどユーザーフレンドリーなものになる可能性はあると考えている。
Strauss氏は「われわれは今や保存できるよりも多くのデータを生み出しており、保存しておきたいと考えているデータの多くを捨て去っている」と述べるとともに、「DNAの記録密度と耐久性を考えた場合、この問題を軽減できるかもしれない」と述べている。
これがうまくいけば、既にデータのアーカイブを実施している企業に向けてより安価なサービスを提供したり、データを捨て去っていた人々をターゲットにできるはずだ。
アーカイブ担当者の懸念
DNAストレージの可能性に対する期待がある一方で、一部のアーカイブ担当者は慎重な態度を示している。
DNAストレージによって、ビット化け(ビットの0が1に、あるいはその逆に変化することでデータが喪失する現象)や、データが読めなくなるという問題が解消されるかもしれない。しかし、ノースカロライナ大学における図書館情報学の教授を務めるCal Lee氏は、メディア上に格納されている情報に対する意味のある、そして実用的なアクセスをどのように保証できるのかという点の方が懸念として大きいと述べている。
これには、データのアクセス方法や提供方法、使用方法についての技術的な知識とともに、長い時間をかけて適応していくべき多くのコンテキスト情報が必要となる。Lee氏は、未来の人々がDNA鎖を構成するヌクレオチド上の塩基情報を検出する装置を持っていたとしても、そういった塩基情報の解釈方法に関する知識を持ち合わせていないかもしれないと述べている。また、関連するフォーマットやアプリケーションに関する膨大な仕様一式をDNA内に埋め込んでおく必要もあるだろう。