こんにちは、さとうなおきです。「週刊Azureなう」では、先週の1週間に発表されたMicrosoft Azureの新機能から、筆者の独断と偏見で選んだトピックについて紹介していきます。
LinuxCon North America 2016
8月22~24日にカナダのトロントで、The Linux Foundationが、Linuxコミュニティのカンファレンス「LinuxCon North America 2016」を開催しました。
8月23日の基調講演には、Microsoftのエンタープライズオープンソース担当CVP(コーポレートバイスプレジデント)であるWim Coekaertsが登壇しました。Wim CoekaertsはLinuxコミュニティで有名な人物であり、Oracleで長年Linuxを担当していましたが、今年3月にMicrosoftに移籍しました。
今回の基調講演の内容は、記事「マイクロソフトは本当に変わったか--オラクル出身幹部が語るMS×Linuxの今」でまとめられているので、是非ご覧ください。最近のMicrosoftのオープンソースやLinuxへのスタンスが理解できると思います。以下に記事で印象に残った一文を引用します。
Microsoftの未来は「WindowsとLinux」の両方に掛かっているとCoekaerts氏は考えている。結局の所、「LinuxはMicrosoftでの日常の一部」だというわけだ。
しかし、人々はこれを信じるだろうか?MicrosoftがLinuxやオープンソースソフトウェアを本気で支援していると世界を納得させる方法は1つしかない。「Microsoftは、それをコードで証明する」と同氏は言う。
「Microsoftはすでに多くのことをしてきたが、すぐに、もっと多くの取り組みを見せていく。当社は以前とは違う会社であり、今こそそれを証明するときだ」とCoekaerts氏は講演を締めくくった。
基調講演前日に投稿されたWim CoekaertsによるAzure Blogのポスト「Live from LinuxCon – Sharing the latest news and learnings on Microsoft’s open journey」では、顧客がLinuxとWindowsのサポートを求めており、MicrosoftがLinuxに大きな投資をしていることが紹介されています。オープンソース化されLinuxをサポートしている.NET Core、PowerShell、Visual Studio Codeも、その一例です。AzureでのLinuxやオープンソースのサポートについては、「Linux および Open Technologies」ページをご覧ください。
また、(Azureやほかのクラウド、オンプレミス環境にわたってシステムを管理できるサービスである)Microsoft Operations Management Suite(OMS)に関して、2つの発表がありました。
まず、プレビューで提供されていたOMSのLinux管理機能がGA(一般提供)になりました。Fluentdをベースに構築されているOMS Agent for LinuxをLinuxサーバに構成することで、syslogイベント、50以上のLinux OSパフォーマンスメトリック、NagiosやZabbixのアラート、300以上のFluendプラグインを活用したカスタムデータを、OMSに集約できます。
次の画面では、OMSに集約したLinuxサーバ群のSyslogエラー イベントを検索しています。
OSMでのLinuxサーバ群のSyslogエラー イベントの検索
そして、OMS Container Solution for Linuxのパブリックプレビューがリリースされました。これは、今年6月のDockerConのGeneral SessionでMicrosoftのAzure担当CTOであるMark Russinovichがデモしていた機能です。これによって、Linux上で動作する多数のDockerコンテナからのログを集約して監視することができます。
次の画面では、OMSでDockerコンテナを監視しています。
OMSでのDockerコンテナの監視
OMSには無料プランがあり、簡単に使い始めることができるので、是非OMSをお試しください。
Azure App Service:PHPランタイムのアップデート
ウェブアプリやモバイルバックエンドのためのPaaSであるAzure App Serviceは、.NET、Node.js、Python、Javaに加えてPHPもサポートしています。
最近の重要なセキュリティアップデートに対応するため、Azure App Serviceが提供するPHPのランタイムのバージョンがアップデートされます。Azure App ServiceにPHPアプリケーションをデプロイしている方は、アップデート後のバージョンで自分のアプリケーションが正しく動作することを確認してください。
ランタイムのバージョン | 現在のバージョン | アップデート後のバージョン |
---|---|---|
5.4 | 5.4.45 | 5.4.45 |
5.5 | 5.5.36 | 5.5.38 |
5.6 | 5.6.22 | 5.6.24 |
7.0 | 7.0.7 | 7.0.9 |
なお、Azure Blogのポスト「Azure App Service: PHP 7.0 のサポート開始と PHP 5.4 のサービス終了に関するお知らせ」でお知らせしているように、近日中にAzure App ServiceでのPHP 5.4のサポートを終了する予定ですので、ご注意ください。そのため、PHP 5.4は、今回のセキュリティアップデートの対象に入っていません。
Azureポータルでの、Azure App ServiceのPHPランタイムバージョンの指定
また、今年7月にリリースされた、新たにPHP 7.0をサポートするMicrosoft Drivers for PHP for SQL Serverの最新バージョン4.0が、既定で有効化されるようになりました。既定で有効化されるデバッグツールXDebugのバージョンが、2.2.4から2.4.0にアップデートされました。
詳細は、Azure App Service Team Blogのポスト「PHP runtime and extension updates including potentially breaking changes」を確認してください。
Azure SQL Database:JSONサポート (一般提供)
SQL Server 2016では、新たにJSONのサポートが追加されました。
SQL ServerベースのデータベースサービスであるAzure SQL Databaseは、SQL Server 2016のさまざまな新機能をサポートしつつあります。今年3月にJSONサポートのパブリックプレビューがリリースされており、それが今回GA(一般提供)になりました。
Azureには、JSONをサポートしたドキュメント指向のNoSQLデータベースサービスであるAzure DocumentDBもあります。すべてのデータがJSON形式の場合は、Azure DocumentDBをオススメします。一方、リレーショナルデータベースに部分的にJSON形式のデータを格納したい場合や、リレーショナルデータをJSON形式で読み書きしたい場合には、Azure SQL DatabaseのJSONサポートが便利でしょう。
詳細は、Azure Blogのポスト「JSON support is generally available in Azure SQL Database」、Azure SQL Databaseのドキュメント「Getting started with JSON features in Azure SQL Database」、SQL Serverのドキュメント「JSON Data」を確認してください。
SQL Server 2016/Azure SQL DatabaseのJSONサポート
Azure SQL Data Warehouse:東日本リージョンでの一般提供
データウェアハウスサービスである「Azure SQL Data Warehouse」は、今年7月にGA (一般提供)になっていましたが、残念ながら東日本/西日本リージョンではまだGAになっていませんでした。
今回、Azure SQL Data WarehouseがGAになっていなかった東日本リージョンを含むいくつかのリージョンで、Azure SQL Data Warehouseが新たにGAになりました。西日本リージョンでは、依然としてGAになっていないことにご注意ください。
西日本リージョンではまだGAになっていないAzure SQL Data Warehouse
それではまた来週。
- 佐藤直生 (さとうなおき)
- 1999年から、OracleでJava、アプリケーションサーバ、開発ツールなどのエンジニア/テクニカル エバンジェリストを担当後、2010年9月にMicrosoftに入社。Microsoft Azureの黎明期からエバンジェリスト/テクノロジストとしてAzureを担当。オライリーなどの技術書の監訳、翻訳も多数。 ブログ: https://satonaoki.wordpress.com/ Twitter: https://twitter.com/satonaoki