しかし、Linuxはこの落とし穴を避けたと同氏は述べ、その理由として「(GPLを策定した)FSF(Free Software Foundation)と私の関係は良いものとは言えないが、私はGPLv2を愛している。このライセンスがLinuxの成功を決定づけた要因の1つになっていると確信している。というのも、このライセンスはコードの寄贈を要求するため、技術的な観点から見て断片化は発生し得ないのだ」と語った。
そして同氏は「GPLによって、誰もあなたのコードを使って出し抜かないことが保証される。あなたのコードはフリーであり続け、あなたの手から奪い去られたりはしない。コミュニティーを管理していくうえで、私はこの点が重要だと考えている」と続けた。
しかしTorvalds氏はその日のうちに、LinuxカーネルサミットにおけるGPLに関する会議の議題を「弁護士たち:オープン性にとっての害毒、そしてコミュニティーにとっての害毒、プロジェクトにとっての害毒」とすべきだと提案した。
この提案は、次回のLinuxカーネルサミットではGPLの抱える問題について議論するべきだという提案スレッドに書き込まれたものだ。このスレッドが立った理由の1つは、ドイツの裁判所で争われている訴訟についての報告だった。この件は2007年に、LinuxのコントリビューターであるChristoph Hellwig氏がVMwareを非難したことに端を発している。同社のクラウド戦略における中核製品であるベアメタルハイパーバイザ「VMware ESX」がLinuxをベースとしているにもかかわらず、GPLv2に準拠していないという点を問題視したのだった。
それから何年か後、オープンソースソフトウェアの普及を目指す非営利組織であるSFCがVMwareに対してVMware ESX、そして後継製品である「VMware ESXi」のコードをGPLv2に従って開示するよう求める交渉を開始した。しかし、VMwareは2014年にその要求を拒否した。
このためSFCの資金援助を受けたHellwig氏が、ドイツのハンブルグにあるハンブルグ地方裁判所にVMwareを提訴した。同裁判所は2016年8月初旬にVMwareに利する判決を言い渡した。Hellwig氏は高等裁判所に控訴する意向を示している。