ビジョンと合致する「カスタマーサクセス」
会計ソフトでおなじみの弥生は、デスクトップ向け会計ソフトで64%のシェアを持つ。また2014年の「やよいの白色申告オンライン」でクラウドサービスに参入、同10月には青色申告版、2015年7月には「弥生会計オンライン」の提供を開始している。2016年には、クラウド会計ソフトにおいても53.1%とシェアナンバーワンを達成した。

弥生のマーケティング本部マネージャーである吉岡伸晃氏
この躍進は「弥生のカスタマーサクセスへの取り組みが実を結んだもの」であると弥生のマーケティング本部マネージャーである吉岡伸晃氏は言う。カスタマーサクセスとは、「お客様の成功(製品/サービスを通じて達成したいこと)を支援することで、自社ビジネスの成長を目指す」こと。これは「顧客が目的を達成するための支援をする『事業コンシェルジュ』になる」という弥生のビジョンと合致することでもある。
事業コンシェルジュというビジョンは、単に製品やサービスを利用するユーザーをサポートするだけにとどまらず、起業の準備段階から関わっていくというものだ。そのため、起業家応援活動やPR、広告、コンテンツマーケティング、ウェブサイトやアクティブサポートを実施することで、起業家や個人事業主と積極的にコミュニケーションを図っている。
起業してからは、弥生の製品の導入支援やサービス利用支援、活用提案などを提供する。例えば、会計や給与に関する法令は毎年のように改正があるので、不要な税金を支払ってしまうなどの不利益を被らないように案内やプログラムの適用を呼びかけるという。その手段も、メールだけでなくソフトウェアにプッシュ型で通知するなど徹底している。
また通常の業務においても、弥生シリーズの機能を活用してもらうために、業務の効率化や不要なコストの削減に有効な機能の紹介などを知らせている。業務を積極的にサポートしていくことで製品を120%活用してもらい、最大価値を引き出してもらう考えだ。「お客様に継続的にご利用いただき、満足していただくことで、お客様がインフルエンサーとなって新しいお客様をご紹介いただくこともあります」(吉岡氏)という。
一方で、事業者の約7割が会計ソフトを導入していないという現状もある。その裏には経理業務への苦手意識があり、個人事業主においても「ビジネスはやりたいが、お金の管理はしたくない」と考えるケースが多い。弥生はキャンペーンなども交えて、訴求する考えだ。

弥生が用意した会計ソフトのシェア情報
特に注力するサポートでは、困ったときのサポートだけでなく、そもそも「困ること自体が問題」と考えている。そのため、製品上で難しい用語を使わない、補足するコンテンツを用意するといった工夫をしている。それでもわからないときのために、インバウンドだけでなくアウトバウンドの電話サポートも実施している。
ユーザーが困るポイントはノウハウとして持っているため、ユーザーが困る前にプロアクティブなサポートを提供するわけだ。また、チャットによるサポートも提供を開始した。これは「困っているけど解決のために時間をかけたくない」というユーザーのために、使いながら解決する最適な方法となる。これらのサポートにより、ユーザーは最小の工数で確定申告などを行うことができる。