弥生、青色申告対応SaaS提供--簿記など専門知識なくても確定申告まで

遠山恵子 (インサイト)

2014-10-21 17:00

 弥生は、会計機能をSaaSで利用できる「やよいの青色申告 オンライン」を10月16日から提供している。デスクトップアプリケーションの新版「弥生 15」シリーズを10月31日から発売する。

 10月16日に開かれた会見で代表取締役社長の岡本浩一郎氏は「2014年はWindows XPのサポート終了、消費税率の引き上げで“危機”の年だった。それを“機会”に変えて、大幅な増収で乗り越えることができたのは良かったが、それはもう過去としたい。これからの一番の課題は“市場開拓”。まだまだ発展途上の市場において、クラウドを“手段”として活用したい。新規開発したアプリケーションで潜在市場を開拓する」と、クラウドに力を入れていくことを強調した。

岡本浩一郎氏
弥生 代表取締役社長 岡本浩一郎氏

 やよいの青色申告 オンラインは1月からサービスを提供している「やよいの白色申告 オンライン」を土台として新たに開発した。簿記や会計に関する専門的な知識を必要とせず、帳簿と確定申告を容易に作成できるというSaaS。主に個人事業主を対象としている。

 基本機能は「スマート取引取込」「かんたん取引入力」「確定申告書の作成」「帳簿・レポートの集計」の4つ。スマート取引取込は銀行明細やクレジットカードなどの取引データを自動取込、仕訳する機能だ。学習機能で使用頻度が上がるほど精度が向上するという。かんたん取引入力は簿記や会計の知識なしでも取引を入力できる機能。仕訳をせずに入力していくだけで複式簿記を作成できると説明した。

 確定申告書の作成では、画面の手順通りに進めるだけで決算書も申告書も作成できるという。必要な情報を入力すれば控除額などを自動計算し、必要な箇所に転記できる。「控除額が自動計算できるのは、クラウドの会計サービスではウチだけ」(岡本氏)とアピール。帳簿・レポートの集計では、登録した取引から青色申告に必要な帳簿を自動で集計、PDFを作成できる。取引の集計結果をグラフなどのレポートするグラフ機能も充実していると強調した。

 アーキテクチャはHTML5を採用し、クライアントのマルチプラットフォーム化に対応した。クラウド基盤は「Microsoft Azure」を採用、提供するクラウドサービスはすべて日本国内のデータセンターで稼動している。タブレットでの正式サポートも検討中だ。

 税別価格は、すべての機能が利用できる「セルフプラン」が年間8000円から、電話やメールでのサポートが利用でき、仕訳相談や経理業務などの相談もできる「ベーシックプラン」が年間1万2000円から。岡本氏は「弥生の最大の特徴はサポート。クラウドでもデスクトップアプリケーションと同じように、弥生のサポートが受けられるようにした。サプライズとして、セルフプランを初年度ゼロ円とするキャンペーンも実施する」と力を込めた。

 パッケージソフトの弥生 15シリーズの主な強化ポイントは、クラウドサービスの連携強化だ。具体的には「YAYOI SMART CONNECT」対応と「弥生ドライブ」の強化だ。YAYOI SMART CONNECTは、外部アプリケーションやサービスと弥生シリーズを連携し、取引データを自動取込、仕訳をするサービスで、7月から提供しているものだ。岡本氏は「会計業務の効率化に貢献するためにも、YAYOI SMART CONNECTの世界を広げていきたい」と述べた。

 弥生ドライブの機能強化については、クラウド上の弥生ドライブでデータを選択し、ワンクリックで「弥生給与 15」などのソフトを直接開けるようにした。

 オープンデータ化を進めるため、e-Tax/XBRL形式での法人決算書のデータ出力に初めて対応した。法人税申告ソフトで作成した法人税申告書データと合わせ、電子申告ができるようになった。消費税への対応については「12月に最終判断がなされる見込みで流動的だが、2015年10月以降も完全対応を約束する」と表明した。

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