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ハイパーコンバージドの次なる戦略--米Nutanix

松岡功

2016-09-23 07:30

 「ハイパーコンバージドインフラ」と呼ぶ統合型システム製品がこのところ注目を集めている。この分野で急成長を遂げているのが、米Nutanixだ。果たして同社の製品の魅力はどこにあるのか。次なる戦略はどのようなものか。このほど来日した同社最高マーケティング責任者(CMO)のHoward Ting(ハワード・ティン)氏に聞いた。

ITのシンプル化を図るハイパーコンバージドインフラ

 Nutanixが提供するハイパーコンバージドインフラ製品は、サーバとストレージ、仮想化機能などを統合してITインフラのシンプル化を図り、ユーザー企業がアプリケーション開発やサービス対応に集中できる環境を提供しようというものだ。

 統合型システムの進化形ともいえるハイパーコンバージドインフラ製品は、IT市場において急成長している分野の1つで、大手ベンダー各社も注力している。そうした中、この分野で今もっとも注目を集めているのが創業7年目のNutanixである。

 Ting氏によると、同社のハイパーコンバージドインフラ製品はこれまでに世界90カ国でおよそ4000社への導入実績を持ち、同社の業績もここ数年、倍増ペースで伸長しているという。

米Nutanix CMOのHoward Ting氏
米Nutanix CMOのHoward Ting氏

 Ting氏は、同社のハイパーコンバージドインフラ製品の特長について次のように説明した。

 「まず、サーバやストレージおよびさまざまな仮想化環境をネイティブに統合しており、あらゆるビジネスアプリケーションをあらゆる規模で実行できる。また、当社ならではのウェブスケール技術と“インビジブル”な設計思想に基づいていることから、企業のIT部門は当社の製品を導入することによってデータセンターを徹底的に簡素化できる。これにより、IT部門はこれまでの煩雑なインフラ管理から解放され、企業にとってのビジネス課題を解決する戦略的組織に進化することができるようになる」

 ちなみに、インビジブルとは「目に見えない」あるいは「意識しなくてよい」という意味である。実は、同社の製品の管理や使い勝手をつかさどっているソフトウェア群は「インビジブル・インフラストラクチャ」と呼ばれている。すなわち、インビジブルは同社の製品の魅力を一言で表したキーワードである。

新たな戦略「エンタープライズクラウド」とは何か

 Ting氏は、同社のハイパーコンバージドインフラ製品が急成長を遂げている理由について、「まず、ハイパーコンバージドインフラへのユーザーニーズが非常に高まってきていたところへ、当社がいち早く応えることができた点が挙げられる。また、当初はサーバや仮想化環境に選択肢がなく、用途も特定の分野に使われることが多かったが、今ではそうした選択肢や用途も広がっている。すなわち、非常に柔軟性のあるハイパーコンバージドインフラであることがユーザーから好評を得ている」と語った。

 同社のハイパーコンバージドインフラ製品はここにきて、DellやLenovoのサーバが適用できるようになり、仮想化ソフトもKVMベースの自社製品のほか、「VMware ESXi」や「Microsoft Hyper-V」を使用できるようになっている。また、かつてはVDI(デスクトップ仮想化)が大半を占めていた用途も、今では広範囲な業務アプリケーションに使われるようになってきているという。

 とりわけ、DellやLenovoへはNutanixがソフトウェア群をOEM提供していることから、両社がNutanixのハイパーコンバージドインフラを担ぐ形になっており、販路拡大につながっている。

 Nutanixは最近、このハイパーコンバージドインフラ製品の戦略展開において、「エンタープライズクラウド」という言葉を使っている。同社では、エンタープライズクラウドがハイパーコンバージドインフラの進化した姿だとしている。図に示されているのがその内容だが、エンタープライズクラウドを一言で分かりやすく表現してほしいと尋ねたところ、Ting氏は「Amazon Web Services(AWS)の機能や使い勝手を個々の企業におけるIT環境で実現すること」だと語った。


ハイパーコンバージドインフラからエンタープライズクラウドへ

 これはすなわち、プライベートクラウドではないのか。Ting氏によると、Nutanixではプライベートクラウドという言葉を使っていないという。実はそこに同社の強いこだわりがある。

 そのこだわりについて同氏は、「当社の調査で、プライベートクラウドといっても仮想化環境を適用しただけのケースが少なくないことが分かった。ハイパーコンバージドインフラは最先端のクラウド技術を適用し、さまざまなパブリッククラウドとも柔軟に連携できる真のハイブリッドクラウド環境を実現できるようにしたものだ。さらに既存のIT環境のモダナイゼーションにも打ってつけだ。そうした意味から、エンタープライズクラウドという表現を使っている」と強調した。

激変するIT市場でディスラプティブな存在に

 最後に、NutanixのCMOとして、トップマネジメントの1人として、今後同社をどのような会社にしていきたいか、聞いてみた。

 「クラウドのレイヤで言うと、当社は現時点でIaaSに注力しているが、今後はAWSのようにデータベースやアナリティクスなどの機能も用意してPaaSの領域へも進出していければと考えている。そのように事業を広げていくためにも、まずはハイパーコンバージドインフラからエンタープライズクラウドへの進化をさらに推し進めていきたい。IT市場はこれから一層大きく変化する。そうした市場をディスラプティブ(破壊的)かつイノベーティブ(革新的)に突き進む存在でありたいと考えている」

 実は、筆者がTing氏を取材したのは、今回が2度目だ。最初にお会いした昨年秋の同氏の肩書きは、マーケティング担当シニアバイスプレジデントだったが、今年2月にCMOに昇進した。今回の取材の冒頭で、遅ればせながら昇進のお祝いを述べると、笑顔で「次回はまた昇進していますから」とジョークとも本心ともとれる返事をくれた。同氏のトップマネジメントとしての手腕に、大いに注目しておきたい。

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