個々の研究者がタコつぼ化しないようにするには、共同作業の面白さやそこから生まれる新しい発想を体験してもらうのが一番、ということで、ダンボールや粘土など容易に形作ることができる素材を作って短時間でコンセプトを形にして擦り合わせをする、「絵を描く」という行為を通じて研究開発への想いを共有しベクトルを合わせていく、というワークショップも行った。
クリエイティビティが求められる研究者が組織や専門性の壁を越えるためには、言語よりもむしろアートや工作による表現の方が自由で向いているともいえる。いかに「共感」の場を用意できるかがポイントであるように思う。
Vision forest&段ボールプロトタイピング
プロジェクトマネジメントの手法を活用して「組み合わせ」で価値を生むR&Dを
イノベーションの重要性が叫ばれる中、研究開発の世界もグローバル競争にさらされている。日本はそもそも「擦り合わせ」のアプローチを得意としてきたが、グローバルのデファクトスタンダードを握っているのは、AppleやTeslaに代表される、技術の「組み合わせ」で価値を生むプレイヤーたちだ。日本企業が競争力を上げていくためには、いかにコラボレーションを活発化し、トライ&エラーの質と効率を上げて、高い価値を創造し続けられるかが勝負となる。
ウォーターフォール型のプロジェクトマネジメントで培った経験とノウハウに、目標管理型のアプローチを組みあわせ、コラボレーション活性化のプログラムを並行で動かしていくことで、日本の強みを生かした新しいR&Dのあり方が確立できるのではないか、と筆者は考えている。
かつてのシステム構築では、第三者のPMOを使うという概念が全くない時代があった。しかし今や大型プロジェクトの多くはPMのプロフェッショナルを外部から入れている。近い将来、R&Dの領域においても、同じようなことが起こる可能性は高い。そのためにも、私たち自身、多様なPM経験の蓄積を目指すと同時に、できるだけ多くの企業にそのノウハウの移植を行い、日本企業の競争力向上を支援していきたいと考えている。
- 座間利行 株式会社シグマクシス P2(Program&Project)シェルパ ディレクター
- 外資系メーカー、外資系コンサルティングファーム、ITベンダーのコンサルティング部門を経て現職に至る。主に、製造業(電機・電子部品、精密機器、医療機器、自動車)、およびエネルギー業界の企業に対し、業務改革、IT戦略策定、システムの導入、保守まで一貫したサービス提供を得意とする。また、大規模システム導入プロジェクトにおけるプロジェクトマネージャーの経験を多数有する。顧客企業のビジネスゴール達成まで、変革支援をさせていただく事をポリシーとしている。