「プロジェクトマネジメント」の解き方

守りながら攻める--CIOと「プロジェクトマネジメント」の現在

吉澤亨史 山田竜司 (編集部) 2015年12月15日 07時00分

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 ビジネス環境の変化やデジタル化に伴い、テクノロジをエンジンに多くの企業が変革を迫られている。しかし全社横断的な取り組みとなるプロジェクトや、その集合体であるプログラムが増える一方、事業部門とIT部門の連携がうまく進まない日本企業も多い。

 また、高いベンダー依存度、縦割りの組織や制度、リーダー人材(人財)の不足やスキルの空洞化といった問題を抱えながら、IT部門は、クラウドやモバイル、ソーシャルなど“第3のプラットフォーム”と言われる新たなテクノロジを活用し、経営や売り上げに貢献する難易度の高いプロジェクトに取り組まなければならない。

 守りながら攻める。複雑化するプロジェクトマネジメントの要点を抑えるために必要なことは何か。連載第1回となる今回は数々の大規模プロジェクトのマネジメントに関わってきたシグマクシスのマネージングディレクターである大賀憲氏にその基本的な概念や実現のために必要なことを聞いた。

――今、企業における「プロジェクトマネジメント」のニーズが高まっているとのことだが、その背景には何があるのか。


シグマクシス P2シェルパ マネージングディレクター 大賀憲氏
専門商社、外資系コンサルティングファームを経て現在に至る。製造業・流通業、アミューズメント、総合商社などへの コンサルティングに従事。グループ経営、経営管理、リスク管理などの策定から業務改革、大規模システムのインプリメンテーションまで、一気通貫のサービス提供を得意とする。現在はプログラム&プロジェクトマネジメントのサービスを責任者としてリードしている

 かつてのシステムには、「あるべき姿」というものがありました。1990年代後半から2000年代前半、日本では「グローバル化」というキーワードのもと、企業がこぞって全体最適や業務改革のためにBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)に取り組み、統合基幹業務システム(ERP)導入を始めた時期がありましたが、これもひとつの「ベストプラクティス」であったといえます。

 振り返ってみれば、2000年問題もあって猛烈な勢いで導入されたERPも、現行業務にあわせたカスタマイズを重ねていった結果、狙った効果を半分も享受できない日本企業が多かったというのが実態ではありますが。 

 「プロジェクトマネジメント」という意味では当時から、システム導入を発注したベンダー側のプロジェクトマネージャー(プロマネ)の力量に依存してプロジェクトが進行し、それによって成功不成功が決まると言う状態がほとんどだったように思います。本来は、企業側にリーダーシップをとれる人財がきちんとプロマネとしてアサインメントされ、ベンダー側のプロマネとともにタッグを組んで成功に導く、というのが理想形ですが、経験者が企業にほとんど存在しないので現実的ではありませんでした。

 しかし、それから10年たった今でも、全般的に縦割りで動く日本企業では、トップマネジメント肝入りの全社プロジェクトが展開される場合でさえ、エース級人財がプロジェクトに集められない、というケースも多い。当時も今も最初から戦力的に厳しいのは変わりないのです。困難を伴うプロジェクトに取り組んでも、結果的に期待したような成果は出ないし経営にも事業にもそれほど感謝されない、という状況は続いています。

 システム開発プロジェクト内容そのものも色合いが変わっています。これまでは事業の課題を解決するために、企業の情報システム部門が提案依頼書(Request For Proposal:RFP)と予算を提示し、コンペティションを競り勝ったITベンダーやコンサルティング会社に発注。業務とシステムを設計し、それに順じて開発を進める、という流れでした。時間軸も2年から3年、長いものでは5年くらいかかりました。

 一方、今は急速なデジタル化の進行に伴って、企業の価値創造に貢献するようなプロジェクトも求められています。テクノロジが多様化、複雑化する一方で、市場の変化が速いので、プロジェクトの成果実現までのスピードも圧倒的な速さが必要です。しかし今IT部門はスキルの空洞化に苦しみ、ベンダー自身も従来型のITスキルからの脱却が難航しているのが現状です。

 プロジェクトに求められるものが大きく変わっている今、関わる人や組織がマインドセットを変え、能力と視座を上げていくこと、ITと経営と事業部門が一体となり、システム開発のプロジェクトに臨む必要があります。

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