――各論に落としていく時のポイントは。
システムの仕様に落とし込む段階では、今度はCIO側と並んで「実現手段は全社最適の目線で決める」というアプローチを取っています。自ずと「ベンダー1社だけではシステム構築不可能」という判断になる。結果的に、マルチベンダー、マルチソリューションを組み合わせることになります。われわれは製品やサービスを顧客目線に立って選定し、それらベンダーを束ねる顧客とワンチームで、最後の成果が出るまでプロジェクトマネジメントを推進していきます。
――発注者側に立つということか。
そういうことです。従来のいわゆる「うまくいかない」プロジェクトでトラブルが発覚し始めるのは開発のテストあたりから。予算が固定された中で開発が上手くいかなくなってくると、基本的に馬力がかかる設計開発の予算とワークロードを削っていく。予算内に収めることがゴールになってしまい、そもそもの目的を見失ったまま終わってしまう、そんなプロジェクトにならないように、最初から最後までを一気通貫でお客様と共に設計し、動かしていきます。
別のベンダーを使ってスタートした大型プロジェクトが途中でとん挫してしまった顧客から、「なんとかしてほしい」という要請を受けて仕切り直しに入る、というケースもありました。
――そうした変化の中で、プロジェクトを評価し、方針を決めるCIOは、これからどのような役割を果たせばよいか。
事業基盤を支える第2プラットフォーム型ITと、価値創造をけん引する第3プラットフォーム型IT。この両方を両手でコントロールしなければならない、というのがこれまでの役割と大きな違いでしょう。当面、企業のITはどちらかだけの世界にはならないわけですから、管理する領域とリーダーシップを発揮する領域を使い分け、明確なメッセージを社内に発信していくことが大事です。
日本企業を眺めてみると、デジタル化が企業の競争力に直結しているにも関わらず、多くの企業でCIOが最高執行責任者(COO)よりも一段低いポジショニングで自らよしとしているように見えます。デジタル化の重要性を痛感している企業は、最高経営責任者(CEO)、COO、CIOが三位一体で動いていますね。そういう意味では、CEOはもちろんのこと、CIO自身も自ら意識を変えていく必要があります。
デジタルで事業を変える取組みを、事業部門とIT部門がそれぞれオーナーシップをもって手を取り進めていくならば、両者のリーダーはそもそも同じレベルにいるべきですし、そういう主体性をCIO自身ももって組織に働きかけることが経営にとってとても重要だと思います。