――プロジェクトの進め方そのものが変わると。
基幹系の大型システムの刷新、といったものであれば、やはり第2プラットフォームのテクノロジを活用してウォーターフォール型で着実に、でも市場にあわせて成果実現のスピードは限りなく上げる、というアプローチが必要になるでしょう。
一方、新規事業を立ち上げる、ビジネスモデルを変えるといった価値創造型のプロジェクトでは、第3プラットフォームの新しいテクノロジを活用した未知の世界でのチャレンジになりますから、ちょっとやってみて「違うな」と思ったら修正し、完成系に近づけるというサイクルを高速で回していく、アジャイル型も確実に増えています。しかし、いずれも、全社的取り組みとして事業部門とIT部門が一体となった取組みなしでは実現できないことは変わりません。
システムプロジェクト 2つのタイプ
――そういった新しい取り組みをする企業は増えているか。
増えていますし、もっと増えなければならないと思います。アジャイル型プロジェクトは、基本的にとがったテクノロジを持っているベンチャー企業など他の企業とコラボレーションしていくやり方です。やりたいことを簡単にドキュメント化してまずは作ってみる。それを動かしながら調整し、リリースしてみて顧客の反応を見てまた修正、というスピード感です。こちらはリーダーシップやビジョンが極めて大事な世界ですね。
一方ウォーターフォール型基幹系プロジェクトの進め方も変化が求められています。実際、ここは今当社としても売り上げ規模が一番大きい部分であり、言い換えれば企業からのニーズが最も大きい領域です。プロジェクトのタイプに応じてプロジェクトマネジメントの特性は異なります。
――ウォーターフォール型のプロジェクトマネジメント支援では、どこが評価されるのか。
われわれが最も大事にしているのはプロジェクトの上流部分をきっちりと抑えることです。これまでのプロジェクトでは多くの場合、ITベンダーが要件定義という名前のもとに「お客様がやりたいことを決めましょう」というフェーズを設けて、言葉を選ばずにいうなら「おおざっぱに」要件を決めてしまう。そうなると極端な話、現行をあまり変えたくない人の意見や、現場で声が大きい人たちの要望をざっくり集めて、ホッチキスで留めたような要件定義になってしまうわけです。
大型プロジェクトの大半が「成功裡」と言えない状態で終了する、あるいは経営に評価されずに終わる理由のほとんどはここにある、とわれわれはかねてから考えています。よって、とにかく定めたゴールを達成して成果をきっちり出すことがプロジェクトの目的ですから、「Why?(目的)」を明確にすることを最初の焦点にします。
具体的には、「事業部門側の役員」、すなわちビジネスオーナーと、プロジェクトが取り組むべきことについてしっかりと話し合い、オーダーを明確にしてから、「What?(プロセス)」「How?(手段)」の設計に落とし込みます。ここでのポイントは、最高情報責任者(CIO)やIT部門、事業各部門との合議ではなく、ひとつひとつビジネスオーナーと合意形成を図るということです。