組織が、特定のデータを著作権や特許などの制限なしで、だれにでも利用、再掲載できるような形で入手できるようにする取り組みである「オープンデータ」関連の政策が、世界各国で進んでいる。日本では約180の自治体が取り組み、政府が開設したデータカタログサイトData.go.jpは1万5000件以上のデータを検索できるようになっている。こうしたオープンデータの動きは、これからどう進むのか。そしてオープンデータを活用した先駆的試みである「シビックテック」はどうなるのか。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)准教授で内閣官房IT室オープンデータ伝道師の庄司昌彦氏に聞いた。
オープンデータ1.0への道のり
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)准教授の庄司昌彦氏
――日本のオープンデータのこれまでの取り組みを教えてください。
日本のオープンデータは何をして、なにができなかったのか。どういう課題があるのか。その整理のために、まずはこれまでの取り組みである「オープンデータ1.0」から、今後の取り組みである「オープンデータ2.0」へと至る流れを解説します。
日本のオープンデータの取り組みは、2011年3月11日の東日本大震災から始まりました。その前に民主党政権が出したIT戦略の中にも、オープンガバメントの一環としてデータの活用は書いてありますが、ソーシャルメディアの活用などが中心でオープンデータは具体化しなかったという認識です。急に進み始めたのは東日本大震災のときに、電力の受給状況を知らせるアプリをつくる人や、避難所や物資の情報を集約する人が出てきてからです。それから2012年に政府IT総合戦略本部が「電子行政オープンデータ戦略」をつくりましたが、これがオープンデータという言葉が入った初めての公的な文書です。その文書によって、オープンデータの目的は「透明性・信頼性の向上」「国民参加・官民協働の推進」「経済の活性化・行政効率化」だと、わかりやすく示されました。
その後、2013年に「電子行政オープンデータ推進のためのロードマップ」(工程表)が作られ、2015年末までに他の先進国並みのデータの公開と活用を実現すると宣言しました。そしてG8「オープンデータ憲章」でも、先進国がみんなオープンデータに取り組む方針に合意しました。2015年には「新たなオープンデータの展開に向けて」という文章も出ていますが、これは工程表を加速するための方針を上書きしたものです。
このオープンデータ1.0で取り組んだのは、「個別の活用を進める」というよりも「全体の仕組みづくり」でした。その大きな成果のひとつに、全省庁をまたがって横断検索できるData.go.jpというサイトがあります。