最後に
OSSとビッグデータ・アナリティクスというテーマで、アナリティクスとOSSのテクノロジーを中心にご紹介してきた。
当初バズワードであった「ビッグデータ」という言葉が意味しているものは、包括的なアーキテクチャ(アナリティカル・エコシステム)という形で具体化されたと考えている。アナリティカル・エコシステムが実現する世界は、アナリティクス自体をアナリティクスの対象にする領域にまで進化し、そのプロセスを一部自動化しながら事業および業務へ統合していくフェーズに入ったと考えらえる。
そしてOSSは、人類が経済活動を行う上で、すでに必須のものとなった。特にアナリティクスの分野においては、OSSを取り込まないという選択肢はもはやないだろう。
本連載でご紹介したように、データの取得から加工・分析・見える化ということを、大きな投資に頼らず、OSSの力を借りることでしか、真のアナリティカル・エコシステムは実現されないのではないか。さらに、今はない機能も、新たなOSSが登場し、機能補完されていくことは容易に予想できる。
ある企業の特定目的のITシステムのためではなく、アナリティクスという普遍的なテーマだからこそ、RやSpark、機械学習ライブラリのChainer/Caffeのような各種OSSの開発が進んでいるのだろう。
OSSのコミュニティのポリシーとして、「OSSから得たものは、OSSへ返す」という話を聞いたことがある。今後、さまざまな企業がOSS上で開発したプログラムやライブラリを、OSSとして共有する時代も近いかもしれない。
- 島田 茂
- 日本テラデータ プロフェッショナル・サービス本部 ビッグデータ分析ラボ 部長
- プロフェッショナル・サービス本部ビッグデータ分析ラボを統括。過去には、先進ITソリューション・製品の研究開発を大手IT会社にて国内および国外(主に米国・英国)の研究所で従事。その後、グローバル企業における日本法人の営業経験を通じて、経営に興味が高まりOSSを普及させるベンチャー企業を設立。テラデータの新たなチャレンジに魅せられ日本テラデータに入社、ビッグデータ分析ラボ(通称BAL:バル)を立上げ、今に至る。島田氏のほか、共著者は次の3人。日本テラデータ ソリューション・セールス・スペシャリスト 長谷川 亮氏、プロフェッショナル・サービス本部 ビッグデータ分析ラボ コンサルタント 片瀬 友英氏、同コンサルタント 樫下 茂氏。