和田氏:たしかに、まずは従業員からデジタル化していくべきですが、そこからさらにユーザーにも見てもらうことが大事です。今は英語でもみんな気にしないので、海外でつくったものをそのまま見てもらう。iPhoneやAndoridでつくったものをそのまま体験してもらったうえで、「これはどうですかね」と言う。
たとえば銀行の支店の支払いサービスに旅行代理店の人が興味を持ち、「うちだったらこうなるかな」と考える。お客さん自身がそこで楽しんでくれることが重要です。

アバナード ケイパビリティ・デベロップメント・ディレクター 和田玄氏
デジタル推進室をつくってる会社もあれば、特定の部門の担当者が出てきている場合もありますけど、顧客はとにかくデジタルをどう使っているのかという情報にものすごく飢えている。
具体的な事例を5個出せばそれにたいして全部反応してくれるから、単純に見せていくべきだと思います。僕はそこで「英語だけど、説明できますよ」「設計もかなり入れることができますよ」とか多少セールスしたりはしますけど、とにかく実物を見せないと全然話が進まない。
クラウドだってそうです。目には見えないけど、実際に管理してる様子は見せることができる。「ほら、こうやって移るでしょ」って言うと、やっと実感してくださる。見せて触って体感してもらわないと、全然話が進まないですね。
その後は顧客に「自分も会社の業務のプロだから」ということで乗り気になっていただくと、いいチームになっていく。そうすると勝ち負けは関係なく、自然発生的にプロジェクトが立ち上がる。それは素晴らしいし、楽しいことだと思います。
林氏:そうですね。ユーザー自身に「これをやったら楽しいな」と思ってもらわないと話が進まない。「お前がデジタルやれ」って言われたからデジタルをやっているという消極的なお客さんに「ビジネスプランをつくらなきゃいけないから、これをやったらいくら儲かるか考えてください」と言われても、ちょっと困ってしまう。
その場合、僕は次のように言います。「いや、そんなのはいいからまずは小さくやりましょう。これは会社の名前を変えて使っていいですから、社内でやりましょう」と。そうしたら「自分たちでやるだけだったら、ライセンスはいらないんだね」ということになって、ようやく話が進んでいく。
第5回につづく。