ロボット工学の3原則
ロボットを主題として扱ったSFとして著名なのがIsaac Asimovの「ロボットシリーズ」と呼ばれる一連の短編・長編作品である。もはや古典の域の作品群であるが、そこで作り出された「ロボット工学の3原則」は今も広く知られ、引用されている。
具体的には、
- 第1条:ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない
- 第2条:ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない。ただし、与えられた命令が、第1条に反する場合は、この限りでない
- 第3条:ロボットは、第1条および第2条に反するおそれのないかぎり、自己を守らなければならない
というものであり、ロボットが人間にとって安全かつ便利に使えるようにするための条件・制約を包括的に(あるいは大ざっぱに)表したものである。「ロボット」を「家電製品」に置き換えても、「自己を守る」→「壊れにくい、長持ちする」のような読み換えをすればだいたい通じるのではないかとも言われる。

これらが完璧に満たされていれて、かつ、充分な能力があるロボットならば、使い勝手に何ら問題はなさそうに思えるであろう。ところが実際にはいろいろな問題を生じる可能性があり、多くのロボットシリーズ作品(特に短編)では、3原則が内包する問題によりもたらされるUXが考察され、語られていると捉えることができる。ストーリーはある意味「カスタマージャーニー」でもある。
たとえばある作品では、第2条と第3条が絶妙に拮抗してしまう状況になり、ロボットが無限ループから抜け出せなくなるという事態が発生する。その状況に陥った根本原因は「命令(指示)の与え方」にあったのだが、「人間と同じような感じでやりとりができるが、微妙に人間とは違う」ゆえに生じる問題とも言える。
それがどういうUXを生み出すかということを意識しつつこれらの作品を読むのもおもしろい。
ヒューマノイドロボットとして考えるとまだだいぶ未来の話であるが、車の自動運転などの領域では、もう現実に近い課題も含まれる。こうしたフィクション内での思考実験も重要な知見となることも多いであろう。