しかし、システムのオープン化の進展に伴い、ユーザーの選択できる範囲が広がってきました。特にサーバ仮想化技術を導入することにより、システム基盤までもユーザー企業が選択できるようになってきました。OS、ミドルウェアについては本気で使えるOSS の台頭があり、ベンダー製品に加えて選択肢が増えました。
このような環境変化を受けて、低コストで確実なシステム運用をめざすためには、自社主導でシステム構築・運用を追及する必要があると考えましたが、それを実現するためには、いくつかのチャレンジが必要でした。そのチャレンジの1つが「OSSの活用」でした。それ以前から、中国電力では、OSSの評価を実施しており、OSSは本気で使えるという実感を持っていました。
その中で、以下のようなことを確認したそうです。(1)ソースコードが公開されているため、ユーザー自ら信頼性・脆弱性などの確認が可能であること、(2)長期間安定して利用するかどうかはユーザー自身で判断可能であること、(3)ソースコードが公開されているため、自己責任でコードの変更が可能であること、(4)商用ソフトを導入することに比べて費用のコントロールが可能であること、(5)サポートが必要な場合はベンダーを選べることです。
一方で、もしもの緊急時にサポートがない、セキュリティは大丈夫か、使用実績がないので工数増で費用がかかるなど心配する声もあったようです。
さて、ここまでのお話でOSSをなぜ活用するに至ったかということについて説明しました。では、なぜPostgreSQLの採用に至ったのでしょうか。
まず、OSSの活動はコミュニティが主体ですが、PostgreSQLのコミュニティは非常に運営がしっかりされており信頼できます。日本では、JPUGやPGEConsといったコミュニティが良質な情報を日本語で提供してくれています。また、オープンな組織と環境でさまざまな視点から議論があり、利用者ニーズが開発者に直結しています。
実際の採用事例としては、2016年4月に始まった電力自由化に関連したものです。新料金計算システム、ウェブ会員システムやポイントシステムなどさまざまなシステム構築にPostgreSQLで対応し、スマートメータから30分ごとに電力使用量情報を収集するシステムにも採用したといいます。このチャレンジの結果はどうだったのでしょうか。
システムは安定稼働しており、ベンダー製品と同様の感触を得たそうです。PostgreSQLは予想以上の製品力でスマートメータから届く500万件のデータ処理の性能確認もでき、驚嘆したそうです。導入する前の「心配する声」は単なる言い訳にすぎないと感じたと話されていました。