Ciscoは、アプリケーションパフォーマンス管理ソリューションを提供するAppDynamicsを、IPO直前に37億ドルで買収する意向を明らかにした。AppDynamicsの企業価値が、最新の評価で19億ドルとされていたことを考えると、今回の買収はかなり大胆なものに思える。
買収完了は2017年中の予定だ。AppDynamicsは、Ciscoのモノのインターネット(IoT)およびアプリケーション事業担当シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーを務めるRowan Trollope氏の指揮下に入り、新たなソフトウェア事業ユニットになる。
AppDynamicsの競合相手には、New RelicやDynatraceのほか、CA TechnologiesやBMCが提供するアプリケーションモニタリングソリューションがある(AppDynamicsの競合企業としてSplunkの名前が挙がることもあるが、Splunkの製品はログの分析に重点を置いており、実際には、多くの顧客が両社の製品を組み合わせて使っている)。
同社がIPOのために準備した目論見書では、同社のアプローチと従来のITの管理とモニタリング用ツールとの違いが列挙されている。
「当社のアプリケーション統合スイートは、ソフトウェアアプリケーションおよびITインフラストラクチャのパフォーマンスを、基盤となるコードに至るまでモニタリングし、それらの情報と、ウェブブラウザを使ったフライトの予約や、モバイルデバイスを使った送金、自動車のナビシステムを通じた指示の取得、在庫管理システムにおける物理的な商品の位置確認などの『ビジネストランザクション』を自動的に関連づける。
これらのビジネストランザクションのパフォーマンスに関するリアルタイム情報は、顧客に対し、エンドユーザーの体験や、ユーザー体験を改善するために必要な行動、それらと関連するビジネスの成果などについての行動可能な知見を提供する。
従来の製品は、多くの場合資源集約的かつ高価であり、一般にクラウド環境やハイブリッド環境、プロダクションファーストソフトウェア環境、マイクロサービスなどの、最新の複雑なアプリケーションやITアーキテクチャを扱う能力を持たない」
AppDynamicsはオンプレミスでも、「Microsoft Azure」や「Amazon Web Services(AWS)」などのパブリッククラウドでも、ハイブリッド環境でも利用できる。同社のターゲットは中規模企業から大企業で、50カ国に約2000社の顧客を擁する。同社は、自社のソリューションの有効市場規模を120億ドルと見積もっている。
多くのスタートアップと同じく、AppDynamicsには損失も累積しており、目論見書によれば米国時間10月31日時点で約4億7700万ドルの赤字がある。しかし、同社はコンスタントに成長を続けており、10月31日時点での売上高は、前年同期比54%増の1億5840万ドルとなっている。