優れたアプリケーションプログラミングインターフェース(API)を評価しない企業などないはずだ。しかし、これはもろ刃の剣だ。本記事では、APIの無秩序な増加や、品質に関する懸念、デジタル革命という名の下でのAPIの美化という負の側面にも目を向ける。
API経済と呼ばれているものに対する関心が高まっている。これは控えめな表現だ。API経済は深刻な懸念を呼ぶ可能性があり、泡沫(ほうまつ)のようだと表現した方が適切かもしれない。
市場の頂点と呼ぶのが適切とは言えないかもしれないが、APIに対する熱狂と、APIの管理を模索する多数のベンダーについて思いを巡らすには十分だ。
以下のことに目を向けてもらいたい。
- Googleは2016年に、API管理プラットフォームを手がけるApigeeを6億2500万ドルで買収した。
- APIの無秩序な増加はあらゆる分野で起こっている。あらゆる企業がAPIを欲している。筆者は、インターネットによる家具販売を手がけるWayfairがプレスリリースで自社のAPIを誇ったのを目にした時から、APIをめぐる喧噪に思いを巡らせるようになった。
- API管理大手のMuleSoftが2017年に新規株式公開(IPO)を実施する可能性に目を向けても、Gartnerのハイプ・サイクルにおける「過剰期待の頂」に近づいていると考えられるだろう。
誤解しないでもらいたい。筆者は他の人々と同様、APIを好意的に評価している。APIは、クラウドコンピューティングを現実のものにするうえで必要不可欠だ。また、デジタル変革の基盤でもある。さらに、統合にかかる莫大なコストや人手の削減を実現してきてもいる。APIとは、ソフトウェア同士がやり取りしたり、データを交換する方法を定めるものだ。要するにAPIはさまざまな点で、テクノロジの世界をうまく機能させていくために必要となる要素なのだ。
しかし、APIは問題を抱えてもいる。まず、さまざまな企業が時代の先端を走っていると見せたいがためにAPIを開発するという、APIのスプロール現象とも呼べる問題がある(APIの美化と言ってもよいだろう)。また、品質の問題もある。すべての企業が自社のAPIを適切に維持管理できているわけではない。このため、APIの管理にまつわる問題の解決を支援するベンダーが数多く存在している。Gartnerによる2016年10月の「Magic Quadrant(マジック・クアドラント)」を参考にしてほしい。
Saphoの最高経営責任者(CEO)Fouad ElNaggar氏はインタビューのなかで、APIを手がけようとする企業が多すぎるのではないかと語っている。同氏はそう主張できる立場にある。企業のレガシーシステムを活用するためのプラットフォームを手がける同社は、70以上のAPIを接続する必要に迫られている。こういったAPIのなかには適切に維持管理されているものもあれば、適切に管理されていないものもある。そして大多数のAPIは、これら2つの中間に位置している。
ElNaggar氏は「Twilioのように優れたAPIを用意している企業もある」と述べたうえで、「一方、そうでない企業もある」と述べている。