トップインタビュー

「VR空間でのコミュニケーションが当たり前になる」--よむネコ - (page 3)

飯田樹 山田竜司 (編集部)

2017-02-16 07:00

 --VRを活用したサービスはHOME'Sも始めていますね。建築以外の分野ではいかがでしょうか。

 新清士氏:結婚式がわかりやすい例です。結婚式場の下見の代わりにVR空間を見ることで、会場のサイズ感が把握できます。また、360度カメラを使って当日の様子を記録すれば、カメラマンが写す新郎新婦の画像に写っていない部分で、来場者がどんな表情をしていたかの情報も見ることができます。

 医療では、Tokyo VR Startupsが投資しているHoloEyesのケースが日本では先進的です。内臓や骨の位置は人によって少しずつ違いがあります。手術の際、患者さんのCTスキャンのデータを3D化してVR映像として映し、医師とは別の人に見せて、今どのあたりを切っているのか、ナビゲーションできるようにする方法を開発しているのです。手術時の記録も保存できますし、教育機材にもなるでしょう。

 製造業でも、工場の生産ラインのトレーニングツールとして、VRでの実験を始めているという話を聞いています。VR空間を使えば、効率良く作業をするためのパーツと工具の置き方を、機械の位置を実際に変えることなくシミュレーションして調整できるでしょう。

 --自分の会社では何をしたらいいのか、イメージがつかない人も多いかと思います。上司に「VRをやれ」と言われたらどう考えるべきでしょうか。

 新清士氏:どの業界でも、今はVRを体験できる機会が限られているため、VRの威力があまり知られていない状態です。いろいろな活用法が登場してきて、それらを見た上でないと判断がつかないという現状があります。感覚的にはウェブが登場した時に近いでしょう。Googleが出てきた時には何に使えるのかわかりませんでしたが、10年経って、結局一番儲かったのは検索エンジンだったとわかりましたよね。その状態に近いと思います。

 次の段階で現れる課題は、いかに簡単にVRを作れるようにするかです。初期のブログではHTMLを書かなければなりませんでしたが、ブログパーツが登場したことで、誰でも発信できるようになりました。それと同じことがVRでも起きていくでしょう。GoogleもFacebookも、VR空間の中で、VRを使って簡単にコミュニケーションができるブラウザを作ろうとしています。これはブラウザがVRに拡大されるという話で、メディアにとってはVR空間でどう関心を持ってもらうかが課題になるはずです。

 --「VR脱出ゲーム」の先には、VRのどのような展望を描かれていますか。

 新清士氏:まずは今のサービスをユーザーに提供するのが大前提です。VRの業界地図をまとめた「THE VR FUND 2016 VR INDUSTRY LANDSCAPE」というチャートがあります。本の中でも触れていますが、本を出した2016年4月時点よりも、今は複雑化している状況です。日本版も最近出ましたが、まだまだ層の薄さを実感します。インキュベーションプロダクトはファンドの仕組みが弱く、行政のサポートも限定的になってしまう現状があります。そのため、まずは自分の会社を頑張らせなければならないと思っている段階です。


 その先の未来として、VR空間でのコミュニケーションが当たり前になる時代が来ると想定しています。ZuckerbergがOculus Connect に登壇したときのプレゼンテーションで、VR空間内で会話をしたり、火星に行ったり、チェスをしたり、写真を共有している動画が公開されています。Facebook Messengerを使ってリアル空間のように喋ることも、VR空間で撮った画像を、そこからFacebookに投稿することもできていました。このように、FacebookのシステムとVRのシステムを完全に統合するのが彼らの目標なのです。

 こういったVRの世界を作ることには私も共感しており、将来的に、VR脱出ゲームはそのネタのひとつになると考えています。VR空間の中で、離れたところにいる人ともコミュニケーションが取れるようになり、会話の途中で「じゃあ脱出ゲームに行こうか」となるイメージですね。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

マイナンバーカードの利用状況を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]