「ひとり情シス」――IT人材不足と逼迫傾向にあるIT予算の両方の問題から、企業のITを一人で引き受けるトレンドだが、中規模企業に強いデルがひとり情シスの支援に乗り出す。デルはまた、中堅企業向けの支援として、ハイブリッドクラウド、ERPについても提供する。これに合わせて、”ITコンシェルジュ”として営業担当のスキルアップを図る計画だ。
デルはPC直販という歴史から、中小企業を多く顧客にもつ。直販、間接販売を通じて中規模企業を支援しており、日本に6万社あるといわれる中規模企業のうち2万2000社となんらかの接点を持つという。シェア約30%という立場を生かして、2016年末に中規模企業(従業員数100人〜999人)のIT動向調査を行った。
「ひとり情シス」は調査において、重要なキーワードとなった。調査からは、ひとり情シス状態にある企業は14%、IT専任者がいない企業は13%もあることが明らかになった。1人もしくは2、3人で200人から数百人規模のユーザーを持つ企業のITを担当しているだけでなく、他部門と兼任の人もいるとのことだ。

”ひとり情シス”と聞くと、孤独、支援がない、忙しいなどネガティブなイメージを持ちがちだが、実際に”ひとり情シス”に会ってみると、経営層と直接やりとりできる、自社内の事業とITの有効性や関係について社内で提案ができる、といった「攻めのIT」を実践している人も多い、とデルの広域営業統括本部で執行役員 統括本部長を務める清水博氏は言う。
そこで、デルは「ひとり情シス・ソリューション・9つの打ち手」として、守りと攻めの両方をカバーする対策を提供する。管理作業の自動化と簡素化、デルの経験に基づく利用想定による仕様プロセス省略、ハイパー・コンバージド・インフラ(HCI)とハイブリッドクラウドなどだ。


ひとり情シスソリューションの1つ、PC導入の負荷高止まりへの対策としてのカスタムファクトリーインテグレーション。生産工場で顧客のイメージをプリインストールして出荷することで、購入から配布までの時間と作業を短縮できるという。
デルでインフラストラクチャ・ソリューションズ事業本部の本部長を務める木村佳博氏は、「(ひとり情シスは)これまでは少人数でなんとかするしかないという現状だった。だが、ITが支援できる幅が広がったことにより、対応する攻めと守りの手当てを打つことで、環境を大きく打開することができる。むしろ、(ひとり情シスは)中堅企業における最終形と考えており、われわれは支援にコミットする」と述べた。
なお、経済産業省の調べによると、IT人材不足は今後さらに深刻化する模様。2015年で既に17万人不足だが、2019年には供給が減少に転じることで、2030年には59万人が不足すると予想されている。

新しい事業戦略ではこのほか、ハイブリッドクラウド導入支援、中規模企業向けERPパッケージの販売も開始する。ハイブリッドクラウドでは、国内の主要なクラウド事業者に加えて、Microsoftも手がける。Amazon Web Services(AWS)についても検討中とのことだ。ERPパッケージでは、SAP、Oracle、OBC、内田洋行などを取り扱う。