アクセンチュアは、2月24日、調査レポート「Emerging Technologies in Public Service(行政機関におけるデジタル技術導入)」を発表した。
このレポートによると、世界の行政機関では、職員の高年齢化によって、組織内の知識・知見が失われる危機にさらされており、最新のデジタル技術に精通した人材の確保が喫緊の課題として挙げられているという。
調査は、日本、オーストラリア、フィンランド、フランス、ドイツ、ノルウェー、シンガポール、英国、米国の9カ国の行政機関の技術責任者774人を対象にオンラインで実施された。回答者は、さまざまなレベルで市民サービスの創出・維持・拡大および予算・購入・政策決定に関わる職員。ここでいう「デジタル技術」とは、モノのインターネット化(IoT)、インテリジェントプロセスオートメーション、動画アナリティクス、生体認証/アイデンティティアナリティクス、機械学習、自然言語処理/生成が含まれる。
同レポートによると、行政機関の技術責任者の多くは「市民、顧客、スタッフのエクスペリエンスの向上」をデジタル技術導入の主要目的に掲げている。また回答者の60%近くが、「先進技術を活用したプロジェクトを実行するには、既存の職員の再教育に多額の投資が必要」と答えており、研究・開発を担当する職員がデジタル技術の導入プロジェクトの価値を最大限引き出すとしている。
技術系職員に関する採用の優先度はデータサイエンティストやソフトウェアエンジニア、デジタル開発者/設計者で高くなっている。フィンランドとオーストラリアでは、採用と能力開発の課題において最もニーズが高かったのは、生体認証/アイデンティティアナリティクスの専門家。ノルウェーでは、4割の回答者が自然言語処理/生成の専門家の採用を最優先に挙げている。また、シンガポールでは、IoT(21%)、動画アナリティクス(29%)、生体認証/アイデンティティアナリティクス(21%)の採用ニーズが高まっている。
しかし、アクセンチュアでは、先進的な技術スキルと公共機関/市民ニーズに関する知識をあわせ持つ職員の確保は、厳しいとしており、調査回答でも51%が、「先進技術を活用したプロジェクトを立ち上げる際には、まず主に民間企業の中から雇用する人材を探す」と答えている。
技術スキルやデータスキルの不足に対応するために求められる技術として、もっとも多くの回答者が挙げたのが、インテリジェントプロセスオートメーション(60%)。回答者の10人に8人が、「デジタル技術を導入し、特定の反復作業の自動化を図れば、市民のニーズに直結するような仕事に注力できるようになるため、仕事の満足度が高まり、職員の定着が促進される」と答えており、58%が、「デジタル技術によって、組織に関連するスキルの種類が増える」と答えている。