安い人件費より自動化の価値を推進すべし、日本IBMがGTS事業戦略を説明

國谷武史 (編集部) 2017年04月04日 16時00分

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 日本IBMは4月4日、グローバル・テクノロジー・サービス(GTS)事業の2017年の戦略を発表した。同社のコグニティブ(認知)技術の活用やマルチベンダー対応によるサービスの高付加価値化を掲げる。


Vivek Mahajan氏

 同日の記者会見で取締役専務執行役員 GTS事業本部長のVivek Mahajan氏は、「『GTSは何をしているのか』とIBM社員に問いかけてきた。GTSのミッションは世界のITインフラを支えること。我々は誰よりも先に、このミッションに取り組んでいる」と力説した。

 いまのエンタープライズIT市場では、「デジタル変革による新規ビジネスの創出」を合言葉に、人口知能(AI)やIoTといったさまざまなバズワードが飛び交う。これらが日の当たる存在だとすれば、GTSが手掛けるようなITインフラの運用や保守といった領域は、相対的に日陰の存在と映るかもしれない。

 Mahajan氏は、GTSがIBM全社売上の約4割、日本IBMでは約半分を稼ぐ主力事業であると強調。「GTSは世界最大級のITインフラサービスの事業体であり、日本のみならず世界中のミッションクリティカルなシステムをIBMが支えている」と話す。

 だが企業にとっては、IT予算全体の約7割を占めるといわれる運用や保守のコストをいかに削減し、新規ビジネスへの投資に回すかが課題だ。これを実現するサービスと付加価値を提供することがGTSの事業戦略だと、Mahajan氏は説明した。

 Mahajan氏は、企業のITインフラ領域でハイブリッドクラウド化がますます進み、同時にユーザー企業が付き合うベンダーの数も増えていると指摘する。こうした中でGTSの事業を成長させるには、システムインテグレーターからサービスインテグレーターへの変革が鍵を握るという。同氏は2017年の重点施策として、「マルチベンダーサービス」と「コグニティブ・テクノロジー・サービス・プラットフォーム」の2つを挙げた。

ITコストの7割を占める運用費を減らす

 1つ目のマルチベンダーサービスは、ハイブリッドクラウド時代においてユーザー企業が当然のように複数ベンダーのサービスを利用する一方、その環境は非常に複雑となることから、IBM GTSがそれらを束ねて包括なサービスを提供していくという方針だ。

 「さまざまなベンダーがワークロードを提供しているが、顧客が必要としているのはビジネスに成果をもたらすサービス。それを単独で提供できるベンダーなど存在しない。IBMは他社のサービスも統合した最適なサービスを提供する。顧客もIBMにそれを望んでいる」(Mahajan氏)

 Mahajan氏は、IBMが自社のクラウドや先端技術のみならず、広範なパートナーシップや顧客企業の変革の支援も含めたサービスを提供している点に強みがあると説明。GTSとしては2016年12月に、仙台市に「クライアント・イノベーション・センター」を開設したほか、コグニティブなどの技術をモジュール型で提供するサービス形態や、それらサービスを組み合わせた提供において実績が増しているという。

 特に保守面では、企業がマルチベンダーサービスを利用することでIT運用コストを削減し、戦略的投資へ充当できるようになるとした。「顧客のITを保守することは日本IBMが75年以上も前から続けていること。その実績こそが、日本IBMのバリューポジションにつながっている」(Mahajan氏)

 「Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureなどの運用をIBMも手掛けるのか」というメディアの質問に対し、Mahajan氏は「個々のソフトウェアサービスは既にサポートしているし、顧客の要望があればIBMとしては全く問題ない。彼ら(AWSやMicrosoft)の考えは分からないが、あと数年のうちに顧客がマルチクラウドを包括的に運用してほしい望む時代が必ず来るだろう」と回答した。


GTS事業ではマルチベンダー対応やコグニティブ技術の活用を掲げる

 もう1つのコグニティブ・テクノロジー・サービス・プラットフォームは、ITインフラに同社のコグニティブ技術「Watson」を適用し、運用の自動化と障害などの予兆を可能にするというもの。同社では約1年半にわたって運用の自動化に向けた取り組みを段階的に進めており、2017年は最終ステップとして自動化の実現を目指すという。

 「IBMにはメインフレーム時代から30年以上にわたって蓄積したインフラ運用にまつわるデータと経験の『データレイク』がある。Watsonを使って、そこから顧客に最適な知見を提供できるのが強みだ」(Mahajan氏)

 同氏は、このプラットフォームも運用や保守コストの削減と戦略的IT投資につながるものだと説明。「企業はこれまでオフショアやニアショアといった安価なサービスを求めてきたが、そのような仕事は自動化すべきであり、IT部門がより戦略的に価値を生み出す仕事へ集中できるようにすべきだ」と話している。

ヘルプデスクにもWatson

 記者会見では最新ソリューションという「ワークプレース・サポート・サービス with Watson」と「レジリエンシー・オーケストレーション」も紹介された。

 ワークプレース・サポート・サービス with Watsonは、社内向けのITヘルプデスクサービスにWatsonを適用し、従業員からの質問内容に最も合致する回答をWatsonが自動で導き出すというもの。IBM社内でもMac端末を展開する際に利用しているといい、BluemixサービスのAPIも活用して約3カ月でサービスを開発した。

 「既に類似性の高い質問から正しい回答を導き出すという点ではWatsonの効果が求められている。繰り返し学習することによる品質の向上によって、ヘルプデスクの効率化を支援したい」(Mahajan氏)

 レジリエンシー・オーケストレーションは、IBMが2016年10月に買収したSanovi Technologiesの技術を活用し、ハイブリッドクラウド環境におけるディザスタリカバリの自動化を実現する。

 既に海外では、大手の銀行が災害時に複数の復旧サイトへの自動切り替えを実現するために導入しているといい、日本でも今秋から本格的に提供するとしている。

以下はGTS事業戦略説明会で紹介された主なプレゼンテーション。

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