「SORACOMの顧客数は6000を突破した。ユーザーの意見を反映して進化を続ける」--。5月9日に開催したメディア向け説明会で、ソラコムの代表取締役社長の玉川憲氏が示したのはSIMカードを利用したIoT通信プラットフォーム「SORACOM」の順調な成長ぶり、顧客の業種や用途の広がりだった。
ここでは新たに発表された事例を紹介する。スマートルームセキュリティは月額500~980円で使えるホームセキュリティサービスにSORACOMが利用。窓枠などに設置された宅内のセンサが異常を検知した際の通報や、ホームセキュリティ機器類の死活管理に使用しているとした。
ソラコムの代表取締役社長の玉川憲氏
日の丸自動車興業ではバスに搭載したスマホからGPSデータを送信、対応するスマホアプリなどでリアルタイムでバス情報を通知する際にSORACOMを利用している。
京成電鉄では170カ所ある踏切に監視カメラを設置し、踏切事故発生時に遠隔で映像を確認している。また踏切設備の稼働ログを近距離無線でカメラに連携し、クラウドにアップロードしているとした。
トーア紡コーポレーションでは、電力の集中管理にSORACOMを利用している。電力消費を抑え、ピークをいかに管理するかを工場内の設備機器の制御を担うPLC(Programmable Logic Controller)から電力使用量を取得し、クラウドへ送信するのにSORACOMを利用。さらに工場内ダッシュボードとスマートフォンで可視化し、現場主導で省エネの対策をしているという。
このようにサービスは順調に広がっているが、ソラコムのエコシステムも拡大している。パートナープログラムである「SORACOMパートナースペース」での「SPS認定済パートナー」に新たにKii、KYOSO、日本電気、日置電機の4社を認定。パートナーシップを強化している。
このほか、顧客の要望に応え、3つのサービスを拡張をさせるという。
低トラフィック用途向け新料金体系を5月16日から提供開始
より少ないデータ送受信用途のためのグローバル向けIoT 向けのデータ通信 SIM 「Air SIM」 の新料金体系「Low Data Volume」を5月16日から提供開始する。この料金体系は、SORACOMプラットフォームの特徴はそのまま、移動体の位置情報のトラッキングや、インフラの監視といった、データ通信量の少ない用途向けの料金体系で、基本料金月額0.4米ドル、Mバイトあたりデータ通信料金0.5米ドルで利用可能とした。
SORACOMの利用用途としてIoT用途での活用が進んでいたが、デバイス側は通信モジュールの小型化や低価格化が進んでおり、システム側もクラウドの技術やマネージドサービスといった少ない初期投資で迅速にデータを処理できる環境が整いつつある。このため、従来の投資対効果の尺度では導入が難しかった、通信量や通信頻度の少ない用途においても、セルラー通信を活用したシステムへの要望に応える。
グローバルで各国のセルラー通信のSIMを利用できる「SORACOM Air for セルラー」は、すでに日本および米国、欧州で提供を開始している。グローバル向けAirSIMは、複数のキャリアと接続しており、1枚のSIMで、120を超える国と地域で利用できる。
「SORACOM Funnel」を機能拡張
クラウド連携をサポートするクラウドリソースアダプタサービス「SORACOM Funnel」を機能拡張し、パートナーのIoTソリューションへの連携を開始する。今回、アプレッソのデータ連携SaaS「DataSpider」、ウイングアーク1stのデータ可視化ツール「MotionBoard」、KiiのIoT基盤「Kii」の合計3つのSaaSとの連携に対応する。ソラコムのパートナープログラムである「SORACOMパートナースペース(SPS)」で、ある一定の実績を持つSPS認定済パートナーの製品やサービスから、順次対応するIoTソリューションを拡張していくとした。
SORACOM Funnelは、クラウドリソースアダプタサービスの接続機能を提供しており、2016年1月にサービスを開始した。これまではAWSや、Azureへの連携に対応していたが、この連携先をソラコムパートナーが提供するSaaSにも開放する。
LoRaWAN対応デバイスのオープン化
サードパーティ製のLoRaWANデバイスへの対応を順次開始する。これにより、すでにソラコムが提供開始しているリファレンスデバイスに加え、ユーザーは自身の用途に応じ、適したエンドデバイス・モジュールを選定、SORACOMで利用できるようになる。
これまでは、ソラコムが販売する開発者向けリファレンスLoRaデバイスの1種類のみが利用可能だったが、5月10日からSORACOMプラットフォームで利用できるLoRaデバイスの登録申請の受付を開始し、順次、利用できるリファレンスデバイスを増やしていくという。
LoRaWANは、データ転送速度が低速ながら、省電力で広域をカバーできるという特性があり、IoT/M2M通信での利用で注目を集めている技術。また、グローバルにその仕様が策定・公開され、標準化が推進されている。