SAPは5月16日から18日まで、米フロリダ州オーランドで年次イベント「SAPPHIRE NOW 2017」を開催した。ERPは「Systems of Record」(記録のためのシステム)だが、SAPの最高経営責任者(CEO)のBill McDermott氏は、Systems of Innovationであるとして、「SAP Leonardo」を発表した。
1年前の約束「共感」の成果は?
McDermott氏はまず、2016年のテーマだった「Empathy」(共感)の継続として、この1年で実施してきたことをまとめた(1年前のSAPPHIREでMcDermott氏は自分のメールアドレスを伝え、顧客の声を知りたいと呼びかけた)。ガイダンスという点では、3年後までの詳細なロードマップ、UI「SAP Fiori」のロードマップを公開したほか、デジタルトランスフォーメーションのナビゲーションツール「SAP Transformation Navigator」も用意した。
S/4 HANAへのスムーズな移行という点では、「SAP Cloud Trust Center」としてデータセンターの稼働や信頼性についてのリアルタイムの情報を知らせるサービスを開始した。またSAP Fioriについてはすべてのポートフォリオで実装を進めている。
併せて、英国で訴訟に発展した間接アクセス問題(連携するアプリケーション経由でパートナーや顧客がSAPのデータに間接的にアクセスする際にライセンスはどうなるかという問題)については、サードパーティーシステムでの静的な読み込みアクセスについては無料にすると発表。「あなた方のデータだ」とMcDermott氏が述べると会場からは拍手が起こった。
「SAPは500億ドル以上を、顧客のビジネスを前進させるためのイノベーションに投資している」とMcDermott氏、2010年に就任した際、Sybaseを買収、2011年には「SAP HANA」の実装に成功し、翌年には「SAP HANA Cloud」を発表した。SucessFactors、Ariba、Sycloの買収もこの年だ。2013年にはアナリティクス「SAP Lumira」「SAP Fiori」を発表、Hybris、KXENなどの企業を買収した。
「S/4 HANAはエンタープライズ向けのデファクトのインメモリプラットフォームになった。SAPの歴史上最も急速に受け入れが進んでいる製品だ」とMcDermott氏は戦略の成功をアピールする。クラウド版の「SAP S/4 HANA Cloud」については、「最もインテリジェントで重要なクラウドERP」と述べた。クラウドではERP機能のほか、SuccessFactorsなどのLoBも備える。
これらが、サプライヤーなどとつながることができるビジネスネットワーク「SAP Business Network」と連携して、さらなる効率化や自動化が可能となる。「193カ国に向けて、企業の規模を問わず、21世紀の産業向けにポートフォリオを統合している」とMcDermott氏。その仕上げが、「SAP Digital Boardroom」だ。
画面に地域別の売り上げ、在庫情報、HR情報など必要な情報をリアルタイムで表示し、経営者ら参加者がこれを見ながら、詳細情報を得たり、予測分析したりなどのことができる。
導入した経営者から評価が高いという「SAP Digital Boardroom」。
HANAについては、Intelのエグゼクティブバイスプレジデント兼データセンターグループ担当ゼネラルマネージャー、Diane Bryant氏が後に登場し、今年夏にローンチする次世代Xeonプラットフォーム「Xeon Processor Scalable Family」で、HANAワークロードの性能は前の世代と比較して60%改善することなどを発表している。