一方で、こうしたスキル改革の実現には日本特有の課題があると説明する。それは、日本のビジネスマンが「自分のスキルが会社に閉じたもの」と風に考える人が多い点という。さらに各国と比べて昇進年齢が遅く、在宅勤務などを許さない働き方の多様性を認めないなど「キャリアプランの多様性を認めない」点も課題であるとした。
同社では、こうした課題に対応するため、企業が取り組むべきテーマとして、(1)「スキルを体系的に再構築(リスキル)しテクノロジにより学習スピードを上げること」、(2)テレワークの導入など地理に関わらず「能力を発揮しやすい働き方を整備すること」を挙げた。
例えばスキルを体系的に再構築することで、社内の承認プロセスや固有のシステムを覚えるプロセスなど機械でもできる仕事を認識し、より本質的なスキルを知ることが必要だと説いた。機械ができる仕事はRPAなどのロボティクス技術に代替し、その労力をより本質的なビジネススキルの獲得に注力することが必要というわけだ。
テクノロジで学習スピードを上げた例として、販売業でモバイルトレーニングアプリを活用した例を挙げた。この事例ではアプリを使い、在庫確認やタスク管理の知見、顧客のタイプ別の対応方法、季節のトレンドなどのTipsを共有した。この結果、販売員が”外さない接客”ができるようになり、10~25%程度生産性が向上したという。
スキルを体系的に再構築にした例では、アクセンチュアがデータ入力の業務を、RPAなどロボティクスにより自動化した例を挙げた。このポジションにいた1万7000件の人材に対し、データ分析などのスキルを教育することにより、付加価値の高い仕事を担える人材に成長したという。
さらに、同社では「能力を発揮しやすい働き方」を整備することにも取り組んでいると続けた。例えば、これまでは業績に連動した「相対評価」を採用していたが、現在は個人の成長目標に連動した絶対評価を採用し、制度をシンプルにしているという。
このほか、アクセンチュア社内の世界中のプロジェクトを上司を通さずに応募できるようにして自分の興味があるキャリアが構築できる「社内転職」をできるようにしたり、リモートワークにより、出勤しなくても働ける環境を整えたりしているとアピールした。
このように、労働人口が減っていく社会では、人が企業を選ぶ「エンプロイーバリュープロポジション」(従業員むけの差別化)を意識すべしと主張。有能な人材を獲得するためのパイプラインを強化することが重要と締めくくった。
これまで業績に連動した相対評価を採用していたが、現在は個人の成長目標に連動した絶対評価を採用。マネジメントも変えた