PTC LiveWorx

“あのとき時代が動いた”--第一歩を踏み出した製造業のデジタル改革

鈴木恭子

2017-05-26 14:55

 米PTCは5月22日から4日間、米国マサチューセッツ州ボストンにおいて、同社のプライベートコンファレンス「LiveWorx 2017」を開催している。「MAKE TODAY. IMAGINE TOMORROW.」をテーマに掲げた今回のコンファレンスでは、同社のIoT(Internet of Things)基盤である「ThingWorx」と、同社の主力製品である3CADの「Creo」やPLM(製品ライフサイクル管理)である「Windchill」との連携がもたらすインパクトに焦点が当てられた。


「LiveWorx 2017」の会場となった「Boston Convention & Exhibition Center」

 2013年にIoTプラットフォームのThingWorxを約1億1200万ドルで買収して以降、PTCはThingWorxを同社製品群の中核に据えた。また、AR技術の米Vuforiaや、産業オートメーション環境への通信接続ソフトウエアを提供する米Kepwareなども傘下に収め、「エンタープライズIoTカンパニー」としてのポジションを確立してきた。ただし、同社バイスプレジデントで広報を統括するJack McAvoy氏は、「IoT事業が急速に伸びているといっても、CADやPLMといった既存のビジネスを否定するものではない」と説明する。

 今回のコンファレンスの特徴は、以前にも増して多くのユーザー企業がセッションを持ち、自社の事例を紹介したことだ。航空宇宙から防衛、製造、サービス、小売といった業界のセッションや、拡張現実(AR)や3Dプリンティング、ドローンといった新技術で、自社ビシネスをどのように変革しているのかまで、約200を超えるセッションが開催された。参加人数は5000人超、日本からも100人以上が参加しているという。

IoTは次世代のPLMになる

 5月23日の基調講演に登壇した、米PTCでプレジデント兼最高経営責任者(CEO)を務めるJames E. Heppelmann氏は、「IoTでフィジカル(物理)の世界とデジタルの世界が融合することで、設計/製造現場は大きく変化する」と力説。昨年刷新した同社ロゴの意味について、あらためて言及した。


米PTCでプレジデント兼最高経営責任者(CEO)を務めるJames E. Heppelmann氏

 2016年の「LiveWorx 2016」でPTCは、自社ロゴのリブランドを発表した。デジタルの「D」とフィジカルの「P」を組み合わせた「万物の陰陽が表裏一体であること示す太極図を意識した」(Heppelmann氏)ロゴは、デジタルとフィジカルの融合を表現しているという(関連記事)

 Heppelmann氏は、「デジタルとフィジカルが融合によって生まれる『デジタルツイン』を活用すれば、これまでの設計/製造のあり方は大きく変革する」と語る。

 デジタルツインとは、IoTで取得したデータを活用し、物理的な世界にある製品の状態を、デジタル上で忠実に再現することを指す。データによって両方の世界がつながり、デジタルの世界に物理的な製品の「双子」がいるような環境になる。これにより、製品の稼働状況をリアルタイムでデジタル上に再現できるため、誤作動の把握や早期の異常検知に役立てられる。デジタル上で稼働状況を把握し、故障前に修理したり、部品を交換したりできれば、ダウンタイム発生による生産性の低下を防止することができる。

 Heppelmann氏は、デジタルとフィジカルの境界線にあるのが「3Dプリンティング」「スマートマニュファクチャリング」「IoTと分析」「AR(拡張現実)/VR(仮想現実)」だと指摘する。「スマートマニュファクチャリングで収集したデータを分析/活用することで、これまでの製造業では実現しなかったアプローチが取れる。また、これまで数カ月かかっていた試作品の作成は、デジタルモックアップ(製品の設計内容を検証するデジタル上の仮想的な試作品)であれば、数時間で作成できるようになる」とその可能性を力説した。


昨年は「陰陽をモチーフにDigitalの『D』とPhysicalの『P』を融合させた」程度の説明だったが、今回はロゴが示す意味と、デジタル&フィジカルの境界線が示す意味にも言及した

 今回の基調講演で協調されたのは、IoTと製造プロセス/PLMとの連携によるメリットだ。IoTデータの活用で製造プロセスを自動化すれば、設計から製造、開発、販売まで製品ライフタイムが、データとして蓄積される。これまでこうしたデータの収集/共有はなされておらず、多くの企業ではPLMが徹底されていなかった。Heppelmann氏は「IoTによるスマートオペレーションが実現し、一気通貫でデータを共有しつつ、各フェーズに最適な形でデータを活用すれば、より迅速な意志決定ができる。IoTは次世代のPLMだ」と訴求する。

 こうした技術の延長にあるのが、AR/VRの活用である。具体的には、実際の製品とAR(拡張現実)の技術を組み合せ、設計レビューやメンテナンス業務の最適化を図ったり、作業現場での操作ナビゲーションをしたりといったことが考えられる。特に、常時ネットワークに接続されているスマートコネクテッドプロダクトは、アフターサービスが顧客満足度を左右する。Heppelmann氏は「フィジカルとデジタルのギャップを埋められる唯一の企業が、PTCだ」と訴求した。


基調講演のオープニングは、レーザー光線が飛び交う中、プロのパフォーマーが5分以上ダンスを繰り広げた

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