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モバイル管理からIoTセキュリティに進出--モバイルアイアンのマインツCEO

國谷武史 (編集部)

2017-06-08 07:00

 企業ではスマートフォンやタブレット端末の業務利用が身近になり、端末を管理する「モバイルデバイス管理」(MDM)ソリューションも広く導入されている。MDMの発展形となる「エンタープライズモビリティ管理」(EMM)を手掛ける米MobileIronは、2月にIoTの研究開発部門を創設。社長兼最高経営責任者(CEO)のBarry Mainz氏は、「EMMのノウハウはIoTのセキュリティ管理にも展開できる」と語る。

MobileIron
MobileIron 社長兼CEOのBarry Mainz氏

 2016年1月に就任したMainz氏は、2016年中にモバイルアプリのクラウドアクセスを制御する「MobileIron Access」など3つの新製品と既存製品のリニューアルを進めたことで、同年第4四半期の業績が好調だったと話す。

 「契約更新率が90%以上になるなど、顧客はわれわれのソリューションを評価しており、ビジネスを持続するための基盤は強化されている。現在のキャッシュフローは850万ドルに高まり、新しい領域へ十分に投資できる体力がある」

 同社が注力してきたEMM市場は、企業のSaaS利用やモバイル活用のさらなる広がりから、今後も成長が見込まれるという。また、クライアントPCもWindows 7からWindows 10への移行が本格化することで、端末管理の需要は堅調に推移するとみる。

 「CASB市場は2020年までに75億ドル規模に拡大し、Windows 10のPCも5億8300万台の出荷が予想されている。これらの市場でわれわれがシェアの1%を獲得するだけでも、大きなビジネスになるだろう」

IoTセキュリティへの布石

 就任以来の実績を強調するMainz氏だが、IoT分野への進出は、同社の新たな成長に向けた布石であるようだ。MobileIronに参画する以前の同氏は、約10年にわたってWind Riverの社長や最高執行責任者(COO)を務めており、同氏にとってIoTは身近な分野といえる。

 こうした経緯からMainz氏は、IoT研究開発部門のトップにWind River出身のSanthosh Nair氏を起用した。「IoTはまだ、さまざまな可能性を模索している段階だが、実際には企業の65%が各種規制に対応しなければ自動車や医療、エネルギーといった業界に属しており、IoTでしなければならないことは明白だ」

 Mainz氏によれば、将来のIoT分野では、インハウスで構築されたアプリケーションなどをオープンシステムあるいはSaaSに移行するといったIT分野と同じような流れが起きると予想される。「例えば、従来は顧客関係管理(CRM)システムなどもユーザーが独自に工夫して開発していたが、今ではベンダーの製品やサービスに合わせている。IoTでも同様だろう」

 同社のEMMソリューションは、企業が同社のネットワークゲートウェイやポリシー管理のサービスを通じてPCやスマートフォンなどの端末を高度に管理するアーキテクチャとなっており、IoTではこれをベースにセンサをはじめとするさまざまなネットワーク接続機器を管理できるようにするというという。

 「エッジの端末の種類が広がっても基本的な仕組みは同じであり、企業としてIoTの管理に必要な機能を付加することで、ソリューションを実現できる」とMainz氏。現在開発を進める端末管理の「EDGECONNECT」、データセキュリティの「SENTRY」、ポリシー管理の「IoT POLICY ENGINE」の3つのIoT向け新製品を2017年下期に投入する。

 「IoT機器やデータの管理、セキュリティ対策では、ベンダーやサービス事業者、通信会社などから多様なソリューションが提供されるだろう。われわれは、いかなる提供形態にも対応していく」

 日本では、既に自動車や電力、エネルギー、重工、輸送の各業界の大手企業とIoT分野の協業の検討を進めており、一部企業とは具体的なトライアルも始める予定だとしている。

 <初出時に「クラウドアクセス・セキュリティブローカー(CASB)」との表現がありましたが、正しくは「モバイルアプリのクラウドアクセスを制御する」です。お詫びして修正いたします。>

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