Cisco System シニアバイスプレジデント兼最高情報責任者のGuillermo Diaz Jr.氏
「セキュアなデジタルビジネスを加速する」――米Cisco Systemsのシニアバイスプレジデント 最高情報責任者(CIO)を務めるGuillermo Diaz Jr.氏は、同社のIT部門がここ数年たどってきた道のりをこう紹介し、「テクノロジが全てを変える世の中では、CIOやIT部門の役割が変化を遂げている」と指摘する。
Diaz氏は、「以前のIT部門は、ユーザー部門の御用聞きだった」と振り返る。今では役割が変わり、同社のビジネス変革を手伝う部門になっている。現在ではデジタル技術を活用した新しいビジネスを加速する役割を要求され、この上でセキュリティも確保しなければならない。
IT部門が同社の事業を直接的に支えた事例が、過去3度にわたって担当したオリンピックの運営である。Diaz氏が率いるIT部門は、Cisco社内のITインフラを運用するだけでなく、オリンピックのインフラも運用してきた。例えば、2016年のリオデジャネイロ大会で伝送したトラフィックは2.6ペタバイトに達し、阻止したセキュリティイベントは800万件に上る。
この時に重要だったポイントは、「いかに快適に、ネットワークを使えるようにするか」だったとDiaz氏。具体的には、無線LANの接続性の体感レベルを維持したり、セキュリティを確保したりといった対応だ。ここでIT部門の知識や大きなインフラを運用する力、管理能力、セキュリティの知見などが生かされたという。
IT部門の知見がビジネスモデルを支える
デジタルビジネス時代におけるIT部門の役割は、新たなビジネスモデルを実現するための基盤を提供することだ。
具体的には、IT部門が持つ技術やインフラの知見を活用する。さらにIT部門は、技術や製品のユーザーでもあり、ユーザーとしての知見も活用する。Diaz氏は、これらによってCiscoの新たなビジネスモデルに貢献できる、としている。IT部門の立場については、「社内の全ての部門と接点を持てる唯一の部門」とし、この立場を利用して、ビジネスプロセスの簡素化や自動化も推し進めているという。
IT部門には、「ご意見番」としての役割もある。同社はこの2年間で20社ほどのIT企業を買収したが、直近で買収した米AppDynamicsについては、初期段階からIT部門も関与して意見を出してきた。CiscoのIT部門は、AppDynamics製品のユーザーだったからだ。
またCiscoのIT部門は、Ciscoの顧客企業から見た理想的なIT部門のブループリント(青写真)としても機能する。IT部門が運用しているシステムは広告塔であり、「わたしたちが社内で実践し、成果を上げていることなら、ユーザー企業にも『取り組もう』という判断が生まれる」(Diaz氏)