米ZDNet編集長Larryの独り言

デジタル変革と企業が直面する現実

Larry Dignan (ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2017-07-06 06:30

 デジタル変革にかかる費用は、安いものではない。保守的な企業は、短期的な業績と未来への投資のバランスや、役員の交代に頭を悩ませている。デジタル変革は素晴らしいものに見えるが、それも中核事業に減速の兆しが見え始めるまでのことだ。

 この記事では、新たな指導者の下で、積極的に未来への投資を進めている企業の例を紹介する。

 Mattelは子供の学びや発達を促し、将来科学や技術、エンジニアリングの職に就くための準備ができるおもちゃを作ることに重点を置いた、デジタル変革の計画を発表した。Mattelはまた、アナリティクスやユーザー体験、デザインなどについても、昨今のテクノロジ企業と似た主張をしている。

 しかし、それを実現するには費用がかかる。同社は同時に、配当金をカットし、短期的な財務ガイダンスを提供するのではなく、長期的な見通しに切り替えることも発表した。Mattelの最高経営責任者(CEO)Margo Georgiadis氏は、これまで配当に回していた資金を、デジタル変革に投じる計画だ。同氏は次のように述べている。

 わが社は自社のパワーブランドを拡大し、ネットワークに接続された、全方位の遊びのシステムと体験を生み出そうとしている。わが社は、デジタルファーストソリューションによって、新たな市場を拡大する。今後はイノベーションのパイプラインを強化することに力を入れると同時に、業務体制を見直し、より無駄がなく、素早く、スマートな戦略を可能にする取り組みを進めていく。また、企業文化と社内のチームの再活性化を目指す。

 実際、6月に開催されたMattelの投資家向けイベントで行われた説明には、テクノロジや新時代のデザイン思考、プラットフォームに関する議論が多く盛り込まれていた。明らかでないのは、Mattelに2月に加わったGeorgiadis氏が、Mattelの再編を行い、インターネットに接続するおもちゃへと重心を移すために、何が必要になるかだ。Georgiadis氏は、Googleで役員として米国の事業やさまざまな技術プロジェクトを数年間担当した経歴を持つ。

 General Electric(GE)では、CEOのJeffrey Immelt氏が退任して、GE HealthcareのCEOを務めていたJohn Flannery氏に交代することが決まり、継承計画が発表された。GEはデジタル化に社運を賭けており、「Predix」プラットフォームや、産業用インターネットに力を入れている。ただし、Immelt氏が率いるGEは、キャッシュフローや利益率の面から、アナリストらには評判が悪かった。Flannery氏は、デジタル化と、デジタル変革に対する投資を重視していると述べた。しかしその一方で、同氏は今後のデジタル化の取り組みを見直すとも述べている。

 「これ(デジタル変革)が今後のわが社を決定づける特徴だという見方は変わらない。デジタル変革は将来、すべての産業を変容させる。そして、わが社はその分野で勝利を収め、この分野をリードするための取り組みを進めていく」とFlannery氏は述べている。とはいえ、デジタル化にはコストがかかる。Flannery氏は、収益、キャッシュフロー、そして人材を獲得しプラットフォームを開発するのに費用がかかるデジタル事業への投資のバランスを、どのように取るのだろうか。ウォール街ではすでに、GEの各事業の評価が進められており、GE Digitalがスピンオフされるべきかどうかを議論している。

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