狙いは“製品販売からソリューション提供へ”の転換
さてこの動き、デルから見ると2つのポイントがあると筆者は考える。
まず1つは、デルがこれまで、クラウドに関する技術や製品には注力しているものの、自らクラウドサービスは手掛けていないことだ。もし手掛けていれば、今回のように外部のサービスベンダーと協業して、自らはリセラーおよびサービスインテグレーターの役目を果たすことなどあり得なかったのではないだろうか。
清水氏は今後のサービス拡充についても「顧客ニーズに応じて品ぞろえをしていく」考えだ。クラウドサービスについて自らは手掛けないが、いわば“クラウドサービス商社”として顧客ニーズに対応していこうというのが、デルの思惑だろう。
もう1つは、デルにとって今回の取り組みは、中堅企業へクラウドサービスをもっと広げていこうというのが最大の眼目だが、同時にクラウドコンシェルジュをもっと増強することによって、“製品販売からソリューション提供へ”と、企業体質の転換を図ることも大きな目的としているのではないだろうか。デルにとっては言われて久しい課題だが、多くのIT企業同様、規模が大きくなると、この体質転換はなかなか難しい。
発表会見の終了後、清水氏にこの点を聞いてみたところ、「人材育成によってソリューションに注力していくのは、当社にとってもちろん大きな課題。今後の成長に向けて最も重要なテーマだと考えている」とのことだった。デルの今回の取り組みにおける深謀遠慮はまさしくこの点にある、というのが筆者の見立てである。

左から、デルの清水博執行役員広域営業統括本部長、ラクスの中村崇則代表取締役社長、カゴヤ・ジャパンの北川貞大代表取締役、エックスサーバーの辰巳準之介取締役最高技術責任者(CTO)