今週の明言

IBMが説く「API×クラウドで企業価値向上」

松岡功

2017-07-07 11:00

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、日本IBMの三澤智光 取締役専務執行役員と、シマンテックの滝口博昭 マネージドセキュリティサービス日本統括の発言を紹介する。

「企業にとってAPIの公開がイノベーションを加速する」
(日本IBM 三澤智光 取締役専務執行役員)


日本IBMの三澤智光 取締役専務執行役員

 日本IBMが先頃、API連携の最新動向について記者説明会を開いた。同社取締役専務執行役員でIBMクラウド事業本部長を務める三澤氏の冒頭の発言はその会見で、企業にとってのAPI連携の価値を述べたものである。

 会見では、証券業界のFinTechを支援する「FinTech証券共通API」の仕様の提供開始や、企業のAPI公開を支援するソリューション「IBM API Connect」の最新動向について説明があったが、それらの内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは三澤氏の冒頭の発言をめぐる話にフォーカスしたい。

 なぜ、企業にとってAPIの公開がイノベーションを加速することになるのか。

 三澤氏はこれに対し、まずAPIの歴史をひもときながら、次のように説明した。

 「APIエコノミーは今や巨大な市場となったが、もともとは2000年頃から、自社の事業の仕組みをAPI公開することによってエコシステムを作ろうと考えた企業が出現し始め、それが徐々に増えていった。公開が早かった企業の顔ぶれを見ると、成功しているところが多い」

 さらにこう続けた。

 「API市場が巨大になったのは、特にこの10年ほどの動きが大きく影響している。その動きとは、ユーザーと常につながり続けているスマートフォンのような端末が普及したことだ。この端末を活用した新しいビジネスが、新たなイノベーションを起こし、それを加速させている」

 ただ、企業がより有効なAPIを公開するためには、バックエンドとなる既存の社内業務システムである「SoR」(Systems of Record)もAPI化して、端末によるフロントエンドの「SoE」(Systems of Engagement)のアプリとリアルタイムに連携させる必要がある。

 さらに、三澤氏は図を示しながら、「企業がAPIを公開し活用していくためには、SoRとSoEの連携に加えて、FinTechのような業種別アプリとの連携、各種クラウドサービスによる外部APIとの連携が求められる。IBMは、こうしたAPIとクラウドで企業価値を高める仕組みを実現するソリューションを包括的に取りそろえている」と強調した。


IBMが描く企業のAPI連携の全体像(出典:日本IBMの資料)

 こう聞くと、API連携はクラウドの普及にも大きく影響しそうだ。この点について三澤氏は、「図のようなAPI連携を包括的に管理できるのはIBMのソリューションだけだ」とし、現在APIを公開している企業の多くがIBMのクラウドを利用していることを示唆した。

 最後に、この話の流れで聞いた話を1つ。三澤氏によると、「Amazon Web Services(AWS)では対応できないほどの規模のクラウド商談をほぼ獲得したので、近々あらためてお話ししたい」とのこと。大いに注目しておきたい。

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