アートとテクノロジ融合の歴史--「アイコン」を生み出した日本人とiPhoneの関係 - (page 2)

増村岳史

2017-07-17 07:00

デザインと芸術との違いとは

 ZDNet Japanの読者諸氏はITビジネスに従事している方が多く、デザイナーと画家の違いなどあまり大差ないように思われるかもしれない。

 しかしながらデザイナーと画家には大きな違いがある。

 デザインとは、ゼロからイチを作るものではなく、いったん引き出しに入れた過去からの積み上げを組み合わせて再構築するものである。

 故亀倉雄作氏(1915~1997年:1964年の東京五輪のロゴやポスターで有名)は日本の家紋からインスパイアを受け、数々の秀逸なデザインを世に残している(参考:亀倉雄策氏について 2014年7月5日22時からテレビ東京で放送)。


トイレのピクトグラムは東京五輪が発祥

 亀倉氏は、「アイコン」のルーツにあるピクトグラム(現在ではピクトグラムの一般名としてアイコンと呼ばれることが多い)を発明し、世界に知らしめたことでも有名だ。このルーツは東京五輪にあるのだ。

 亀倉氏をリーダーとする東京五輪のデザインチームが、五輪を見に来た各国の人たちが設備や競技種目を一目でわかるよう、 言語や国籍に関係なく誰でも理解できるピクトグラムを生み出したのである。ご存知のトイレのピクトグラムは東京五輪が発祥なのだ

 デザイナーはグラフィック(視覚表現)やプロダクト(製品)を通して、クライアントの課題を解決する。


iPhoneのアイコン

 一方、芸術家はまさにゼロからイチを作る――いうなれば、この世の中にいまだ存在しない価値や表現を創造する。Pablo Picassoのキュビズムやポップアートなどはまさにこちらにあたる。

 ここに興味深い例を紹介したい。右側の画像はiPhoneのアイコンだ。そして下の画像は、1977年に米PLAYBOY誌で掲載されたダイナースカードの広告ページ(抜粋)である。

 この2つの類似性に注目してほしい。

 40年も前のクレジットカードのアイコンと、フラットデザインになってからのiPhoneのアイコンに類似性が感じられるであろう。

 アイコンの歴史から、iPhoneのフラットデザインを通してみると、まさにデザインが過去からの積み上げを再構築したものであることを示したと思う。

 デザインと芸術の違いとは端的にはこのようなものだ。


1970年代のダイナースカード

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