ITは「ひみつ道具」の夢を見る

テクノロジとプロダクトデザイン--IT会社がUXに注力するわけ

稲田豊史 2017年05月20日 07時00分

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 アニメ、マンガ、SF映画に登場するガジェットへの憧れは、なにも先進的なスペックや機能に限った話ではない。「カッコいいデザイン」も、十分に憧れの対象となりうる。

 最先端テクノロジの集積物たる乗り物は、その最たるものだ。『風の谷のナウシカ』(84)のメーヴェ、『AKIRA』(88)の金田バイク、『ブレードランナー』(79)のスピナー、『マイノリティ・リポート』(02)の2054年型レクサス――。どれも頬ずりしたくなるほど美しい。

 それも当然だ。『ナウシカ』の作者・宮崎駿や『AKIRA』の作者・大友克洋は、アニメ作家・漫画家であると同時に、当代きってのスーパー絵師。古今東西の半端ない軍事知識・メカ知識をベースに培われたイマジネーションとデザインセンスは、そんじょそこらのプロダクトデザイナーでは太刀打ちできない。


『風の谷のナウシカ』(84)のメーヴェ(Amazonから引用

 『ブレードランナー』の劇中プロダクトデザインを担当したシド・ミードは、フォード社でカーデザイナーの経験もある超一級の工業デザイナー。『マイノリティ・リポート』の2054年型レクサスは、トヨタが北米に持つデザインスタジオがクリエイトしている。いずれもフィクションに登場する小道具だが、「本職」が「本気」でデザインしているのだ。

 実際、フィクションにおけるガジェットデザインは、物語やキャラクターと同等かそれ以上に重要だ。

 「スター・ウォーズ」シリーズは、最新鋭の宇宙船と砂漠のオンボロメカが同居しているところに味がある。松本零士のSF作品に登場する戦闘機や操縦パネルは、「松本メカ」としか言いようのない趣きに満ちているし、手塚治虫が『メトロポリス』や『鉄腕アトム』などで描いた未来ガジェットは「レトロフューチャーの教科書」とも呼ぶべき様式美をたたえていた。

 アニメやSF映画に登場する乗り物や情報家電、デジタルガジェットには、「乗りたい! 欲しい! 身につけたい!」と思わせる強い吸引力がある。

 吸引力を構成する要素は大きく2つ。テクノロジに裏打ちされた「ハイスペック」と、クリエイティブに裏打ちされた「デザイン」だ。

 ただ、現実世界を見てみると、近年は「ハイスペック」の比率が低下しつつあるように思えてならない。

 iPhoneひとつとってもそうだ。ITリテラシーが高い、おおむね上位20%のITエリート以外――つまり「80%の一般人」にとって、きっちり毎年発表される新製品のスペックアップなど、もはや「誤差範囲」でしかない。正直言って、機能だけならiPhone 3GSか4あたりで特に過不足なかった……という人は少なくないはずだ。

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