SAP Sapphire

SAPは企業アプリケーションのテスラになれるのか

末岡洋子

2017-05-29 07:30

 SAPが5月中旬、米オーランドで開催した年次カンファレンス「SAPPHIRE NOW 2017」では、機械学習や高度なアナリティクスがテーマとなり、これらが実現する次世代のエンタープライズアプリケーションに向けた大きな一歩を踏み出したことを印象付けた。共同創業者でこの分野のビジョナリーとして知られるHasso Plattner氏が2日目に行った基調講演をまとめた2回目。1回目はこちら

”ユーザーがシステムを学ぶ”から”システムがユーザーを学ぶ”へ

 コラボレーションでは、初日のデモでも登場した「SAP CoPilot」がある。SAP S/4 HANA Cloud 1705で正式導入した機能で、ビジネスの文脈に合わせてユーザーの質問に答えるものだ。

 デジタルアシスタントの例として、フロントエンド「SAP Hybris」を統合した「SAP Service Ticketing」もデモした。SAPがドイツ・ポツダムで進めているプロジェクトで、チケットの処理を効率化することができるという。

SAPの共同創業者で、Hasso Plattner氏
SAPの共同創業者で、Hasso Plattner氏

 プロジェクトを率いる最高イノベーション責任者のJuergen Mueller氏によると、BtoBでは毎日1万件、BtoCでは毎日7万5000件のチケットが発生しているとのこと。

 SAP Service TicketingはLeonardoの機械学習機能を利用して、例えばインターネットサービス事業者が「なぜ動画をアップロードできないのか」というエンドユーザーからの質問に対し、データ容量制限に達したからという回答を導き出す。それだけでなく、プレミアム顧客に変えるアップセルのチャンスであることを担当者に知らせる、などのことが可能とした。

 ボットによるエンゲージを利用しているのが、製薬会社Bayerだ。まずは購買でボットを導入、「自然言語を使って質問や処理が可能である上、使えば使うほど精度が高くなる」と効果を実感したことから、人事、出張トラベルなどにも拡大しているという。「ユーザーがシステムを学ぶ必要があったが、システムがユーザーを学ぶことができる」と動画で登場したBayerの担当者は語った。

 これらを支えるのがPaaSのSAP Cloud Platformだ。SAPは今年に入り、「SAP HANA Cloud Platform」から「SAP Cloud Platform」に名称変更している。名称からHANAをとったことからもわかるように、SAP Cloud Platformはオープンさが大きな特徴となる。Plattner氏はSAP Cloud Platformは「NetWeaverとは異なる」と述べる。

 SAPの中に「隠れてしまった」NetWeaverに対し、SAP Cloud Platformはすでに600ものパートナー、6500の顧客が利用しており、1000以上のアプリケーションがあるという。「新しいSaaSアプリケーションの開発、統合で最初に選ばれるサービス」とし、SAP Cloud Platformを使ってアプリを開発し、HANA Cloud Integrationでレガシー、SuccessFactorsなどと統合しているという顧客の事例を紹介した。

SAP Cloud Platform Integrationのインテグレーションポイント。
SAP Cloud Platform Integrationのインテグレーションポイント。

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