CIOが旗振り役を務め、スタッフが戦略的な経験を得られるようにする
Omid Shiraji氏はITプロフェッショナルとして駆け出しの時代に、スキルを身につけるために、シティ大学ロンドンの情報リーダーシップ修士課程で学んだ(この課程は、現在はなくなっている)。その教育課程では、学術的な理論と実践的な経験の両方を習得させる、幅の広いアプローチを採用していた。現在ロンドンのカムデン区議会で暫定CIOを務めているShiraji氏は、次世代のITリーダーがキャリアの足がかりを得られるような環境を整えようとしている。
同氏は、2つの具体的な活動について説明した。まずShiraji氏は、カムデン区でITリーダーシップに関する大学院課程に資金面で協力した。その結果2人の修了生が就職し、その1人はたまたま計算幾科学の学位を持っていた。またShiraji氏は職場内で、修了生が適切な職位に就けるようにするための改善プログラムを推進した。
「わたしは、技術的な能力よりも、姿勢や適性に基づいて人材を配置したかった」と同氏は言う。「人材を見つけて、次世代のITリーダーということに関しては技術的なバックグラウンドがすべてではないと納得させることは、難しい場合もある。そういう人材を育てたい場合、十分に安心させる必要があるかもしれない」(Shiraji氏)
非公式の活動も重要だ。ITリーダー育成プログラムの一環として、Shiraji氏はITチームから選ばれたリーダーの候補者が上級幹部のミーティングに出席するという、シャドーイングの仕組みを導入した(訳注:シャドーイングは上級の職員の仕事を観察することによって仕事を学ぶ職業訓練手法の一種)。スキルや能力に関する条件は設けていない。重要なのは、シャドーイングによって、スタッフが組織に貢献できるようになることだという。
「シャドーイングはITプロフェッショナルの意欲を高め、次世代のITリーダーの役割に対する理解を助ける」と同氏は言う。「わたしにとっての成功は、将来のIT部門の幹部の構成が今とはまったく違ったものになることだ。わたしは、必ずしも技術的な能力が高いITリーダーを求めているわけではない。ただ、よい質問をすることができる優秀な人材が欲しいだけだ」
優秀な人材が変化の担い手になれる方法を模索する
Harvey Nashの非業務執行取締役であり、元Rolls RoyceのCIOであるJonathan Mitchell氏によれば、現代のITリーダーは、システムやサービスの総体的な効果に責任を負っており、IT以外のビジネス領域に多くの時間を割くようになっているという。このほかの領域への関与が、次世代のCIOにとって大きなチャンスを生む。
「CIOとビジネスパートナーは、以前よりもずっと高い階層でつながるようになっている」と同氏は言う。「それが現在の方向性だ。変化の担い手としてのITリーダーの役割が大きくなっている一方、サービス提供者としての役割は小さくなりつつある。今のCIOは、ビジネス戦略や企業の方向性と重要な関わりを持っている」