「消費者の変化に合わせて、小売店も変わらなければならない。消費者は、いつでもどこでも購入できて、いつでもどこでも受け取れることを望んでいる」(米NCRでインダストリーソリューショングループのシニアバイスプレジデントを務めるDirk Izzo氏)
日本NCRは9月、スーパーマーケットなどの小売店に向けて、棚に並んだ商品を消費者自らスマートフォンでスキャンし、購入、支払いできるシステム「NCR Fastlaneモバイルショッパー」を発表した。米国と欧米では既に提供済みで、日本国内では2018年1〜3月に提供する。
米NCRでインダストリーソリューショングループのシニアバイスプレジデントを務めるDirk Izzo氏
モバイルショッパーのように店舗の仕組みを変えるサービスを提供する背景には、消費者の購買行動の変化があるとIzzo氏は言う。例えば、食料品の場合、1週間分の食材をまとめ買いする手段は、店舗からオンラインのEC(電子商取引)へと移行している。
店舗は、こうした購買行動の変化を受けて、店舗の形態を物理的に変更することを求められている。生鮮食品や調理済みの食品などのように、まとめ買いの対象ではない商品、利便性を高める商品を、店舗の中央に置くという具合だ。
店舗のレイアウトが変わると、バックルームが大きくなるとIzzo氏は言う。バックルームは、地域の消費者からの発注に応えられるように、配送センターとして機能する。まとめ買いする食材を、消費者の自宅に直接配送する。Izzo氏は、消費者の要望を「いつでもどこでも買えて、いつでもどこでも受け取れること」とまとめる。例えば、オフィスで買い物をして自宅に配送するケースや、自宅で買い物をして店舗で受け取るケースなどがある。
店舗に買い物に行って在庫が切れていた場合は、自宅に配送してもらうこともある。複数の商品を注文して、あらかじめピックアップしておいてもらい、店舗でまとめて受け取るといった需要もある。
スマホによるセルフ購入やオムニチャネル化を支援
米NCRは、消費者の要望に対して各種のサービスを提供している。店舗の仕組みを物理的に変革するサービスを提供するほか、配送事業者とのパートナーシップによって配送も支援する。個々の消費者を理解してレコメンドするためのデータ分析にも注力しており、人工知能(AI)分野のパートナーと協業している。
店舗を変革するサービスの1つが、日本で9月7日に発表したモバイルショッパーである。店舗に並んでいる商品を、消費者自らスマートフォンでスキャンして購入リストに登録し、支払い手続きができる。米国と欧州で導入が進んでいる。大手スーパーマーケットの米Wal-Mart Storesはユーザーの1社である。
モバイルショッパーでは、購入したい商品をスマートフォンのカメラでスキャンするだけで、商品を購入リストに登録できる。商品をピックアップしながら、スキャンして登録していく。支払いは、店舗のレジによる決済のほか、スマートフォンの画面からオンライン決済もできる。スマートフォンに割引情報や関連商品などの情報を送信することもできる。
「物理とデジタルを仲介するオムニチャネルも重要」とIzzo氏は言う。オンラインショップで購入し、実際の店舗で受け取る、といったことをできるようにする。米NCRは、クラウドベースのオムニチャネルのプラットフォーム製品を用意している。
日本国内でもオムニチャネルは増えるとIzzo氏は指摘する。「古い世代は店舗を好むが、若い世代は時間がないのでオンラインでの購入に慣れている。若い世代の可処分所得が増えてくれば、オムニチャネルが当たり前になる」(Izzo氏)
オムニチャネルの事例の1社が、米Wal-Martだ。モバイルアプリを使ってオンラインで注文し、店舗で受け取ることができる。配送については米NCRは関与していないが、米Uberとパートナーシップを組んでいる。